“ローカル5G”でスマートビル実現、三井不とNECネッツエスアイが12月に実験スタート:BAS
三井不動産とNECネッツエスアイは、ローカル5Gの使用する場所に応じてカスタマイズ可能な利点を生かし、多様化する働き方に合わせられる新たなオフィス環境の実験を2020年12月に開始する。
三井不動産とNECネッツエスアイは、ローカル5Gを活用したスマートビルの実現や新たなワークスタイルのサービス提供を目指し、2020年9月に共同実証実験の実施に合意した。
実証実験は、2020年12月から2021年5月まで、日本橋室町三井タワーで行う。両社によると、大規模オフィスビル内でのスタンドアロン方式のローカル5G(4.7GHz帯)を用いた実証実験は、日本初の取り組みとしている。
5Gで高セキュリティなオフィス環境やサービスモデルを創出
ローカル5Gは、5Gの「高速・大容量」「低遅延」「多接続」に加え、自営網の特長である「性能カスタマイズの柔軟性」「高セキュリティ」「安定性」を兼ね備えているため、オフィスビル内の多様な用途に活用できることが期待されている。とくにスマートビルでは、IoT設備やビル内のシステムをつなぐ通信ネットワークの基盤となり、ここ最近、多様化しているワークスタイルに応じる高速・大容量・高セキュアのネットワーク環境を構築することが見込まれる。
今回の合意を受け両社は、三井不動産の持つ「場と機会を活用するノウハウ」と、NECネッツエスアイの持つ「ネットワーク・無線基盤技術と働き方改革ノウハウ」を融合させ、ローカル5Gを活用し、ワーカーの知的生産性の向上、多様なワークスタイルのニーズに対応したサイバーセキュリティに守られたオフィス環境やこれまでに無いビルサービスのモデル創出を目指す。さらに、ビル管理業務にも5Gを採り入れることで、ネットワークで接続された案内ロボットでオフィス内の非接触化などといった新型コロナウイルス感染拡大に対するオフィス利用者の不安軽減にも役立て、さらには大規模地震などの災害対策にも生かす。
実験は、日本橋室町三井タワーの5〜6階オフィスロビーをはじめ、11階の三井不動産オフィス、22階のNECネッツエスアイイノベーションベース内を対象エリアとし、XR、PCレスオフィス、次世代のテナント向けサービスの提供やオフィスビル管理の3つのテーマを掲げて実施する。このうち、VRやARを含めた総称のXRでは、リアルとバーチャル両方のワークプレース設置やコミュニケーションツールとしてのVR利用を探る。
また、PCレスオフィスでは、高速・高セキュリティな無線ネットワークと5Gスマートフォンで、PCを置かないオフィスを試験的に運用。次世代のテナント向けサービスの提供やオフィスビル管理では、NECネッツエスアイの自律走行型案内ロボット「YUNJI SAIL(ユンジ セイル)」やデジタルサイネージを用いて、ビル管理業務の効率化を検証する。
なお、実験に先立ちNECネッツエスアイは、総務省に4.7GHz帯域を活用した実験試験局免許を申請する。2020年内に予定されている商用のローカル5G無線局免許が制度化されれば、三井不動産が商用免許の申請を届け出るとしている。
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