多様なスケールで津波浸水地域を“見える化”する新技術、大成建設:防災
大成建設は、津波に被災した地域の浸水状況を見える化する技術を開発した。新技術は、津波の挙動を解析し、広域から街区までさまざまなスケールで分かりやすく可視化することで、より効果的な事業継続計画を策定できるようにする。
大成建設は、津波による対象地域の浸水を短時間で3次元映像に自動変換し、浸水状況などを可視化する技術「T-Tsunami Viewer」を開発した。
街区での浸水状況の見える化で「粒子法」を採用
津波の対策やBCP(事業継続計画)の作成段階では、過去に対象地域で津波により起きた浸水状況を分析したデータに基づき、対象区域の浸水範囲を見える化する必要がある。
従来の可視化手法は、2次元の色付き等深線を用いて、地図上で津波による浸水深を表現し、色の違いや変化によって津波の波高や動きを確認していた。しかし、これまでの方法では、海岸に押し寄せる津波の挙動や浸水状況などを全ての関係者が直感的に理解することは困難だった。
また、CG技術を用いて、津波による対象地域の浸水状況を分析したデータを3次元化する方法もあるが、3次元モデルの製作には専門技術や多くの時間を要し、解析結果が強調されて、表現されるといった課題があった。
そこで、大成建設は、津波による対象地域の浸水を解析したデータをベースに、広域から街区までさまざまなスケールで、津波の挙動を短時間で正確に3次元映像やVR映像として自動作成する可視化技術T−Tsunami Viewerを開発した。
T−Tsunami Viewerは、広域における浸水状況の可視化では、大成建設が保有する津波による浸水を解析した情報と対象地域の地形データを用いて、波の質感を加えた3次元映像を自動生成する。また、街区での浸水状況の見える化では、「粒子法」という最新の流体解析モデルを使用して、市街地で波が段差を乗り越えたり、複数の街路に対して、流水が合流したり、分流したりといった複雑な水の流れを3次元映像で再現できる。
広域や街区での津波の侵入を可視化することで、関係者間で情報を共有し、合意形成を図れ、有効なBCPの策定が可能となる。今後、大成建設は、現在保有する各種の津波解析技術や今回開発したT−Tsunami Viewerを津波の影響が予想される沿岸域の自治体や工場などの施設を保有する企業に提案していく。
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