充填性も2倍、「加熱改質フライアッシュ」を使用し塩害に強いRC構造物を初構築
奥村組は、加熱改質したフライアッシュをコンクリートに混和させ、初めて構造物を構築した。使用した場所は岩手県大沢川水門の躯体RC構造物のうち、水門の両側にある翼壁部のコンクリート。加熱改質フライアッシュを混ぜ込むことで、コンクリートの組織が緻密化し、耐久性が向上するという。
奥村組は、フライアッシュを加熱改質して混和材とした用いたコンクリートを初めて構造物を構築した。適用したのは、岩手県大沢川水門の躯体RC構造物のうち、水門の両側にある翼壁部のコンクリート。加熱改質フライアッシュを混ぜ込むことで、コンクリートの組織が緻密化し、耐久性が向上するという。海水に由来し、RC内部の鉄筋を腐食させる塩化物イオンの侵入を防止する効果もある。コンクリートの充填性を示す間隙通過性では速度を倍増させ、施工性も向上させた。
フレッシュコンクリートの性能を向上させる加熱改質フライアッシュ
フライアッシュとは、石炭火力発電施設で多く産出される産業副産物。通常は微量の未燃炭素を含んでおり、空気量を制御する化学混和材を吸着させるなど、硬化後のコンクリートの物性に影響を及ぼす可能性があるため、実際に混和するためにはなお課題があった。
奥村組、日本製紙、東北大学の3者は、フライアッシュに含まれる未燃炭素の含有を1%以下まで除去し、影響が出ないようにしたコンクリート混和材を使用する研究を進めてきた。使用する加熱改質フライアッシュは、通常のものに比べ高い品質安定性がある。
3者は、加熱改質フライアッシュを使用した研究で、1.通常のフライアッシュよりフレッシュコンクリートの空気量や流動性が安定する、2.コンクリートの鉄筋間の通過速度が倍増し、コンクリートの充填性が向上、3.塩化物イオンの透過しやすさ低くなり、構造物の耐久性が向上――することなどを確認している。なお、日本製紙石巻工場は、石灰灰を原料とした加熱改質フライアッシュを2015年12月から製造開始している。
今回、実際に構築した同水門は、大沢川と沿岸部で建設中の防潮堤との交差地点にある。津波・高潮による海水の侵入を防ぐための水門で、その下流側や下部に位置するに従って満潮や波浪の影響を受け、塩害による鉄筋腐食のリスクが懸念される。
同部位の構築に当たっては、塩分の浸透を抑制し、将来的な劣化リスクに備え、作業性を向上させる目的で、1m3(立方メートル)当たり40kg(キロ)の加熱改質フライアッシュを混和させた。作業性も考慮し、1袋当たり20kgを水に溶解する内包用袋に入れ、袋をそのままミキサーに投入できるようにした。
水門に使用するコンクリートの設計スランプは8cm(センチ)。普通のコンクリートを使用する場合、ポンプ圧送作業で材料が分離することで発生するポンプの閉塞(へいそく)なども懸念されるなか、安定的な空気量や良好な施工性を確認している。
同社は今後、実構造物などを使用し、塩分浸透抑制効果について、電気抵抗率、塩分拡散係数、コンクリートの内部ひずみ、内部湿度などの長期間モニタリングを行う。その結果を加熱改質フライアッシュの配合設計に生かしていくことで、適用範囲の拡大を目指す。
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