CIMとパラメトリック機能を駆使、一品生産される土木構造物でも“設計自動化”へ:3DEXPERIENCE Conference ONLINE(2/3 ページ)
道路や橋、堤防などの土木構造物は各現場の地形や地質に合わせて単品生産されるため、その設計施工では種々の2D図面を作る必要があった。この膨大な手間や各図面間の不整合は現場の大きな課題となっている。建設コンサルタント大手のパシフィックコンサルタンツは、3D CAD「3DEXPERIENCE CATIA」を用いたCIMで解決を図っている。本稿ではオンラインセミナー「3DEXPERIENCE CONFERENCE JAPAN ONLINE」で、同社の鈴木啓司氏、菊池将人氏、千葉洋一郎氏が行った発表を紹介する。
自動計算機能で配置計画をスピードアップ
講演では実際に作成した3Dモデルを披露しつつ、配置計画用の3Dモデルには、CATIAの設計手順を保持し、設計自動化を後押しするナレッジテンプレートを活用した自動計算機能を付与しているとした。
そのため、堰堤形状を変えるたびに、上流側地形と砂防堰堤の形状や堆積土量が自動算出されるため、トライ&エラーの繰り返しも苦にならず、配置計画の作業は劇的に効率化した。「実際、丸1日以上かかっていた作業が今は1時間もかからない。例えば――」と、講師はCATIAの画面を開き、実際に3Dモデルを動かしながら説明を続けた。
「このモデルでは砂防堰堤の堤高や幅、位置から根入やダム軸、有効高などもパラメータ化している。当初6メートルに設定した有効高を10メートルに変えると、その場合のコンクリートボリュームや補足量も即座に算出される」。
ダム軸や有効高を変えて何パターンでも比較でき、結果は1枚のExcelシートにまとめて見ることもできる。B/C(Benefit by Cost)に優れた配置を素早く決められるのだ。さらに、工事用道路のルート検討も容易で、講師がデモでモデルのダム軸を20メートルほど伸ばし、合わせて工事用道路の平面線形を伸ばして見せると、即座に切土・盛土の範囲が示され、土量も自動算出された。
CATIAを用いて開発された配置計画モデルは、もう一つ特異な機能を備えている。それは、「再利用が可能な点。さまざまな変更に柔軟に対応するモデルですが、他の現場ではどうなのか?新規の現場に合わせて一から作らなければならないのでしょうか?という疑問をよく耳にする」。
しかし、どこであれ別現場の地形データを持ってくれば、その地形にモデルを当てはめられるという。つまり、他の現場にも簡単に適用できるのだ。「もちろん、そこで必要となるコンクリート量や補足土量の範囲も自動的に生成。これをうまく使えば、極めて効率的な配置計画を検討できるはずだ」。
予備設計を可能にするパラメトリックモデル
次に採り上げたのは、予備設計を検討するため、CATIAで作成した“パラメトリックモデル”。従来は、2D図面で予備設計を行っていたため、正面図と側面図など2D図面の間でしばしば齟齬(そご)が生じ、不整合による手戻りなどにつながることも多かった。「そこでCATIAを用いた予備設計では、最初から3Dモデルで設計していくことにした」。
設計者は3次元で地形を確認しながら設計できるので分かりやすく、設計作業を進めやすいのである。しかも、2D図面もその3Dモデルから生成するため、図面間の不整合なども生じない。手戻りによるロスも減らせると、同社では考えている。
また、「この予備設計用の3Dモデルは本堤や側壁護岸、水叩(たた)き、副堤など要所要所にパラメータを設けたパラメタリックモデルで、各数値を変えることでモデル形状もこれに追随して変わる」と説明して講師は、CATIAで砂防堰堤のモデルを開いた。
「このモデルの水叩きは水平状態で数値もゼロだが、ここへ“10”と(パラメーターを)入力すれば水叩きに、10分の1の勾配が付き、合わせて副堤も自動的に下がる」。つまり、値を変えることで形状も自動で変えられるというわけだ。また、パラメータ同士に関係性を持たせられるので、“本堤の高さが伸びたら、それだけ本堤・副堤間も開く”といった独自の経験式も入れている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.