従来比2倍の最大減衰力を発揮する制震オイルダンパー「HiDAX-e」高耐力型、鹿島:耐震
鹿島建設は、建物用制震オイルダンパー「HiDAX-e」を改良し、従来品と比較して2倍の最大減衰力を発揮する高耐力型を開発した。高耐力型は、1台で従来型の2台分に相当する減衰力を備えているため、装置台数や設置スペースの削減が可能で、建物内のスペースを占有することなく、耐震性能を高められる。
鹿島建設は、センクシアと共同で、建物用制震オイルダンパー「HiDAX-e」をアップグレードし、1台で従来型の2台分に相当する最大減衰力4000キロニュートンの高耐力型を開発した。
装置直径は430ミリで従来品と比べ耐力が2倍向上
鹿島建設は2000年、オイルダンパーに組み込んだ制御弁を独自技術で電気制御し、制震効率(振動エネルギー吸収効率)を一般のオイルダンパーと比較して約2倍に向上させた高性能オイルダンパー「HiDAX-s」を開発した。
また、2005年には、コストパフォーマンスに優れる電気不要の制震オイルダンパー「HiDAX-e」を、2015年には、世界初のエネルギー回生システムを導入した制震オイルダンパー「HiDAX-R(Revolution)」をそれぞれ実用化した。HiDAXシリーズは40件を超える超高層ビルに適用され、地震・強風観測により優れた効果も実証されている。
今回、開発したHiDAX-eは、従来型と比較して、最大減衰力が2倍の4000キロニュートンに高めているため、設置台数や設置スペースを減らせ、建築計画や設備計画の自由度を高められる。実大装置の加力実験では、高耐力型が従来型と比較して約2倍の減衰力を発揮することを確かめている。
また、内部の油圧機構や筐体、取り付け部を最適に設計することで、装置直径は、従来の340ミリと比較して大きくなったものの、430ミリに抑えているため、これまでのオイルダンパーと同様に使えながら、耐力は従来比で2倍に向上している。
油圧回路部分は、これまでHiDAXシリーズで培ったノウハウを生かし設計しており、地震の振動エネルギーを高効率に吸収する。さらに、鹿島建設の調査により、風による振動や大地震、揺れの継続時間が長い長周期地震動などに有効なことが判明している。
今後、鹿島建設は、HiDAX-eを同社が使用する制震システムの中で主力機種として位置付ける。加えて、HiDAXの全シリーズを4000キロニュートンの高耐力型にバージョンアップしていく。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 特定地域の地盤や建物が地震でどれだけ揺れるか調査可能な新サービス
地域微動探査協会は、地盤と建物ごとに、地震波の周期や増幅の特性を調べられるサービス「常時微動探査法」と「ハイブリッド微動探査」を開発した。 - AIで地震動観測データのノイズを除去する新技術、大成建設
大成建設は、AIを利用して、地震計の観測データに含まれるノイズを除去する新技術を開発した。新技術は、地震動分析に掛かる労力やコストの低減が図れ、建物の耐震性能評価に必要なデータを従来と比較して半分程度の期間とコストで取得できる。 - “南海トラフ地震”に備え免震建物2方向の揺れを計測、横浜市庁舎に導入
竹中工務店は、地震時に免震建物の動きを計測する「直立型変位計」を開発し、同社の新社員教育寮と横浜市役所新庁舎に適用した。 - 鹿島らが複数のグラウンドアンカーの張力を1台の計測器で測れるシステムを開発
鹿島建設は、沖電気工業と共同で、広範囲に配置した複数のグラウンドアンカーで発生した張力を1台の計測機で調べられるシステムを開発した。新システムは、グラウンドアンカーのストランドに組み込んだ光ファイバーのひずみ分布を計測することで、地山内部の変状や経年劣化などに起因するグラウンドアンカーの張力分布で生じた変動を常時把握する。