レンヌ、シンガポール、銀座――。最先端スマートシティー構築のバーチャルツイン協業プラットフォームを創造:3DEXPERIENCE Conference ONLINE(2/3 ページ)
「スマートシティー」実現へ向け、世界各地で新しいプロジェクトが動き始めている。中でも「バーチャル・シンガポール」や「バーチャル・レンヌ」のプロジェクトは広く知られているが、この両者で計画プラットフォーム作りに使われたのが、仏DASSAULT SYSTEMES(ダッソー・システムズ)の「3DEXPERIENCE プラットフォーム」だ。オンラインイベント「3DEXPERIENCE CONFERENCE JAPAN ONLINE」で、同社の森脇明夫氏、佐藤秀世氏が行った発表から、その全体像を紹介する。
3D都市モデルに仕込まれた多彩な情報を参照しながら検討
「単純に3Dで見るだけなら、大きなコストをかけて大きなデータを作るメリットは無い。大切なのは、多様な情報を可視化し共有していくことにある」。佐藤氏はバーチャル・レンヌでの活用例として、電気自動車の充電スタンド設置場所検討を再現して見せた。
数ある候補地のうち、どこを優先すべきか。町の3Dモデルに組み込まれた情報を参照しながら、検討しようというわけだ。視覚化された騒音情報から交通量の多寡を読み取り、そこへソーラーパネルの設置状況などを重ねることで、より効率よく便利な設置場所を的確に、かつ素早く選び出した。
「ご覧に入れたのはプロジェクトのごく一部だが、こうした形でレンヌ市と当社は共同プロジェクトを進めてきた。その成果として、既にInclusive Urban Futureというパッケージ化したスマートシティーのソリューションも構築している」。
その後、再び森脇氏がマイクを取り、バーチャル・レンヌ・プロジェクトの流れをたどり直し、ポイントをまとめていった。地形データを集約した3次元モデルを作り、関係者が議論できる一つの統合環境=プラットフォームとする。そして、3Dモデル内でカラーリングなどを施しながら、今後の計画を関係者全員に提示し、フィードバックをモデルに反映させていくのである。
森脇氏は、次にダッソー・システムズがリサーチプロジェクトに参加し、スマートシティー分野で有名な「バーチャル・シンガポール」を採り上げた。シンガポール国立研究財団が中心となって開始したプロジェクトは、3DEXPERIENCEをプラットフォームにバーチャルな都市のデジタルツインを構築し、防災やインフラ管理、エネルギー対策、環境保護と言った幅広い分野で検証していこうというものだ。つまり、デジタルツインを意思決定のプラットフォームにして、そこに都市計画と政策決定に必要なデータを集約していった。
「シンガポールも縦割り行政だったので、各省庁の連携がネックだった。バラバラのデータベースを、弊社のダッシュボード技術などを使い、データベース自体は変えずに統合したように見せ、高精度の情報交換を実現していった」。そう言って森脇氏は1本のビデオを上映した。これはダッソーがPLMで培った技術を応用し、バーチャル・シンガポールで行われた多種多様な検証を印象的に描いたムービーだ。実際、検証の対象は、風の流れから学生の下校ルート、騒音量などなど、多岐にわたり、世界のスマートシティーの中でもシンガポールが最先端といわれる所以がよく分かる内容となっている。
「最後に紹介するのはいよいよ日本。大成建設との協業としてアナウンスした『銀座バーチャルシティー』で、日本の事業者と初の3DEXPERIENCEプラットフォームを用いた事例となる」。
東京・銀座地区の約300の商業施設やオフィスビルを3次元モデル化し、街路樹も再現したデジタルツインを構築した。大成建設では、3Dモデルを用いて銀座地区の関係者へより質の高いプレゼンテーションを行い、さらに、このエリアの包括的なファシリティマネジメントを行うことを目指した。会場では再びスピーカーが替わり、佐藤氏によるデモンストレーションが始まった。
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