新型コロナウイルス感染症が建設業の雇用環境に与えた影響を検証、ヒューマン総研:建設業の人材動向レポート(24)(2/2 ページ)
本連載では、ヒューマンタッチ総研が独自に調査した建設業における人材動向について、さまざまな観点で毎月レポートしている。今回は、新型コロナウイルス感染症の拡大が建設業の雇用環境に与えた影響について、各種統計データを基に分析した結果をまとめている。
■建設技能工の新規求人数は全職種の中で唯一前年同月を上回る
ハローワークにおける新規求人数の前年同月比増減率を職種別にみると、建設・採掘の職業(建設技能工)の6月の前年同月比は4.9%増となり、全職種の中で一職種だけ前年を上回る形となった。建築・土木・測量技術者(建設技術者)は同▲3.9%減となり、他の職種よりも際立って減少率が低い。
逆に人材需要が大幅に低下しているのは、生産工程の仕事(同▲44.7%)、販売の職業(同▲29.7%)、サービスの職業(同▲25.8%)となっている。
■まとめ
データから見て、新型コロナウイルス感染症拡大により、雇用環境が大きな打撃を受けたのは宿泊、飲食サービス業、生活関連サービス業、娯楽業、製造業などであり、建設業における影響は比較的軽微であったと考えられる。
その背景には、日銀短観の結果からもいえるように、新型コロナウイルス感染症の拡大が建設業の業況にあまりマイナスの影響を与えなかったことや建設技術者、建設技能工は高齢化が進み、構造的に慢性的人手不足の状況になっていることがある。
今後については、新型コロナウイルス感染症の拡大状況に大きく左右されるが、建設総合統計では、2020年6月の手持ち工事高が30兆7732億円(前年同月比2.5%増)と高水準にあることや令和2年7月豪雨からの復興需要に対応しなければならないこと、国土強靭化計画の推進は避けては通れない最重要課題であることを踏まえると、建設業における人材需要は今後も堅調に推移するのではないかと予測することができる。
著者Profile
ヒューマンタッチ総研(所長:高本和幸)
ヒューマンタッチ総研は、ヒューマンホールディングスの事業子会社で、人材紹介事業を行うヒューマンタッチが運営する建設業界に特化した人材動向/市場動向/未来予測などの調査・分析を行うシンクタンク。独自調査レポートやマンスリーレポート、建設ICTの最新ソリューションを紹介するセミナーなど、建設業界に関わるさまざまな情報発信を行っている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 産業動向:コロナ禍が建設技術者の需要に与えた影響は限定的、ヒューマン総研
ヒューマンタッチ総研は、国内における建設業の人材市場動向をまとめた2020年8月分のマンスリーレポートを公表した。今月のトピックスでは、2020年上半期の建設技術者を対象にした需給動向をまとめている他、新型コロナウイルス感染症が新規求人数に与えた影響も分析している。 - 産業動向:建設業への影響は軽微、ヒューマン総研がコロナ禍での雇用環境を独自分析
ヒューマンタッチ総研は、新型コロナウイルス感染症拡大が急速に悪化しつつある現在、建設業の雇用環境にどのような影響を及ぼしたか、各種統計から独自に分析した。レポートによれば、建設業の業況は、他産業に比べて比較的好調であり、新規求人の落込み幅も全産業で最小だったことが判明した。 - 建設業の人材動向レポート(23):「賃金構造基本統計調査」に見る建設技術者の給与動向、年収550万円で製造業を上回る
本連載では、ヒューマンタッチ総研が独自に調査した建設業における人材動向をさまざまな観点からレポートしている。今回は、厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」をベースに、建設技術者の給与動向を調査した。 - 産業動向:建設業の人手不足は全産業中で最多、厚労省の過不足判断DI
ヒューマンタッチ総研は、国内における建設業の人材市場動向をまとめた2020年7月分のマンスリーレポートを公表した。今回のトピックスでは、厚生労働省の「労働経済動向調査」をベースに、産業分野別で労働者の過不足状況どのように変化しているのかを分析している。 - 産業動向:今期堅調も新型コロナで来期は大幅減を懸念、2020年3月期通期決算から見る建設市況
ヒューマンタッチ総研は、建設業主要各社の2020年3月期通期決算のまとめと今後の市場予測を公表した。レポートでは、新型コロナウイルスの影響を見据えたゼネコンの2021年3月期業績予測が、7社中6社で大幅な減収減益となる見通しが指摘されている。