【第8回】「産学一体となって日本のBIMを変えてゆこう!」:BIMで建設業界に革命を!10兆円企業を目指す大和ハウス工業のメソッドに学ぶ(8)(3/4 ページ)
BIMの技術がどれだけ進歩しても、使うのは「人」である。社内教育も重要だが、BIMを学んだ学生に入社してもらえれば、強力な助っ人になるはず。ところが、日本では海外に比べ、BIMを教えている大学も、手軽にBIMを学べる教育機関も無いという現実から、BIMの学習機会を経験した学生は驚くほど少ない。しかし、徐々にBIMを研究テーマとして扱う大学も出始めており、アカデミックな場でのBIMの議論も進みつつある。大和ハウス工業では、こうした先進的な大学と“産学連携”で手を結び、BIMの可能性を高めるとともに、横のつながりを強めて「人財確保」にもつなげてゆくことを目指している。連載第8回の今回は、海外でのBIM教育などの状況を踏まえ、大和ハウス工業の建設デジタル推進部が、リクルート目的で行っている「BIMインターンシップ」や産学連携について紹介してゆく。
BIM実施物件の現場見学も実施した。実際に、干渉チェックを行った建物の現場に出かけ、まだ躯体の状態だったが、BIMプロジェクトが具現化されている建設中の物件に入って、構造躯体や設備配管を直接確認することは印象深かったはずだ。
現場を見て回った後は、現場事務所に戻って、所長から施工ステップ図などを用いた施工BIMの取り組みについて説明を受ける。施工BIMを実際に体験することも、学生にはBIMをリアルで実感する貴重な体験になっている。
最終日には、統合モデルによる干渉チェックで検出した問題点を発表するミーティングを設けている。Navisworksで干渉している部分のビューを用意して、各自が探し当てた納まり上の問題点を説明し、参加している当社の社員とともに、その干渉部分についての意見を交わす。いわゆる“コーディネーションミーティング”を研修に採り入れている。
その他にも、BIM推進部やBIM推進部の担当役員との懇親会も開催。役員が直接学生と話をして、互いの理解を深める機会としている。
BIMインターンシップは、参加した学生から大変好評を得ている。他社でこのような取り組みをしている企業は、聞いたことがないとも言われた。参加した多くの学生が当社を志望してくれた。
2017年のBIMインターンシップに参加した学生に感想を聞いたところ、「他校でBIMに取り組んでいるという話を耳にしたことがなかったので、他大学の学生と情報交換ができたことは有益だった」という意見も多く寄せられた。
2019年のBIMインターンシップでは、それぞれが違うファミリを作って、BIM 360のワークシェアリングを使い、クラウド上にあるRevitデータに対して、各自が自分の操作するRevitからファミリを置くといった実習を行った。ファミリ作成と同様に、BIM 360を教えている大学は聞いたことがない。
今年は新型コロナウィルスの影響で、実際に当社に集まってもらう形のBIMインターンシップは中止となったが、テレビ会議を使ったBIM 360の活用を軸としたBIMワークショップというようなものを2020年11月頃に開催しようと計画している。参加してみたい学生の方々は、当社人事部に問い合わせてもらいたい。
BIMインターンシップは、インターンシップだけを目的とした特別な内容ではない。当社が普段の業務として行っていることを、体験してもらうものである。こういった実業務に即したBIM教育を行っている企業と大学が連携し、学生が興味を引くような実践的な知識やノウハウに触れる機会を与えることも、教育の場には欠かせないはず。仮に教える人がいないというならば、私自身がいつかは大学の教壇に立ち、未来のBIM人財の育成に一役買ってみたいと思っている。
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