土石流の被害を予測するソフト、UC-win/Roadと連携し被害をVR空間上で可視化:メンテナンス・レジリエンス OSAKA 2020
フォーラムエイトは、土石流の発生地点で流動域である急勾配地と土石流の氾濫・堆積が生じる緩勾配扇状地を統合的に分析して、土石流の被害をシミュレーションできるソフト「UC-1 土石流シミュレーション」を開発した。作成したデモデータは、3DVRソフト「UC-win/Road」のプラグインでVR化することで、土石流の被害規模を想定しやすくなり、適切な対策につなげられる。
フォーラムエイトは、メンテナンスと国土強靭化(ナショナル・レジリエンス)をテーマに掲げる総合展示会「メンテナンス・レジリエンス OSAKA 2020」(2020年7月29〜31日、インテックス大阪)内の「事前防災・減災対策推進展」に出展し、土石流のシミュレーションが行えるソフト「UC-1 土石流シミュレーション」と、UC-1で作成したデータを3DVRソフト「UC-win/Road」上で閲覧できるようにする「UC-win/Road 土石流プラグイン」を訴求した。
急勾配領域と緩勾配扇状地を統合的に分析
土石流の被害予測や砂防堰堤(えんてい)の効果を分析するためには、土石流の発生地点で流動域である急勾配地だけでなく、人家などの保全対象が多く存在し土石流の氾濫・堆積が生じる緩勾配扇状地の状態を考慮しなければならない。
土石流発生時の急勾配地と緩勾配扇状地の状況を算出し、被害の予想などが進められるUC-1 土石流シミュレーションは、京都大学大学院農学研究科が開発した土石流シミュレーター「Kanako」をソルバー※1に採用している。
※1 ソルバー:表計算ソフトが有する機能の1つ。複数の変数を含む数式で、目標とする値を得るための最適な変数の値を算出する機能。
Kanakoは、専門知識が無くても土石流の流下や堆積過程を計算できる。さらに、土石流の流動と堆積のモデルや格子型砂防堰堤の土砂調節機能を解析するモデルを搭載しており、これまでシミュレーションが難しかった砂防堰堤周辺での土石流の流動と堆積過程を再現可能。
こういったKanakoの機能を搭載したUC-1 土石流シミュレーションは、土石流の発生地点で流動域である急勾配領域の解析に、流下方向のみの状況を算出する1次元モデルを使う。土石流の氾濫と堆積が起きる緩勾配領域は、流下方向に横への広がりを加えた2次元モデルで演算。両領域の境界である谷の出口は、急勾配領域と緩勾配領域で計算した結果を踏まえて、総合的に状況を導き出すため、より正確に土石流の被害を想定可能。
UC-1 土石流シミュレーションの解析結果は、水面と河床の形状や流動深、堆積厚、観測点のハイドログラフといった図で見える化できる。
UC-win/Road 土石流プラグインは、UC-1で作成したデータをUC-win/Roadにエクスポートして、いくつかの必要な条件を設定すれば、VR空間上でシミュレーションが行える。UC-win/Roadのモデルから土石流シミュレーション用の1次元と2次元の解析領域をUC-1にインポートすることにも応じている。
また、事前に、UC-1で土石流が流れ込む河川のモデルデータを作り、UC-win/Roadにエクスポートすれば、河川の3Dモデルを自動で作れる。河川形状は、キーボード操作により編集でき、過去に起きた土石流の情報をペーストし再現もできる。
UC-win/Roadでは、高速描画により雨や車のシミュレーションと並行して、土石流のシミュレーションが進められ、シミュレーションに合わせた音声の再生にも対応している。
UC-1とUC-win/Road 土石流プラグインがセットになった「土石流シミュレーションプラグイン・オプション」の価格は33万6000円。プラグインやオプションを含まないUC-win/Road最新版の価格は63万円(いずれも税別)。
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