コールドジョイントの発生を抑えるコンクリート打設計画の自動作成システム:製品動向
大成建設は、コールドジョイントの発生リスクを下げ、現場打ちコンクリート施工で最適な打ち込み計画を自動作成する支援システム「T-Con.PAS(Taisei Concrete placement Planning Assist System)」を開発した。T-Con.PASの性能を検証するため、京都府の天ケ瀬ダム放流設備建設工事など2件のダム建設工事で試行し、有効性を確かめた。
大成建設は、現場打ちコンクリート施工で最適な打ち込み計画を自動作成する支援システム「T-Con.PAS(Taisei Concrete placement Planning Assist System)」を開発した。
コールドジョイントの発生リスクを低減
コンクリート構造物の品質確保には、コンクリート施工時の「打ち込み時間」を適切に管理することが重要となる。通常、コンクリートを連続して打設するには、先に打ち込んで固まり始めたコンクリートに新しいコンクリートを打ち重ねるまでの「打ち重ね時間の間隔」を考慮しなくてはならない。
打ち重ね時間の間隔が開くと境界面にコールドジョイント※1が発生し、構造物の品質低下につながることがあった。
※1 コールドジョイント:コンクリートを層状に打ち込む際、先に打ち込んだコンクリートと後から打ち込んだコンクリートとの間が完全に一体化していないために生じる不連続面を指す。
コールドジョイントの出現を防ぐため、従来は、打ち重ね時間の間隔ができるだけ短くなるように、構造物の形状やコンクリートポンプ車の配置、打ち込み量など多様な施工条件をベースに、現場技術者が打込み順序を計画していた。しかし、検討項目が多岐にわたるため、最適な計画策定には多くの課題があった。
そこで、大成建設は、コールドジョイントの発生リスクを低減し、施工品質の向上を図るため、打ち重ね時間の間隔が短くなるよう打ち込み計画を自動作成するT-Con.PASを開発した。
T-Con.PASは、1台のコンクリートポンプ車で施工できる範囲(ブロック配置※2ごとに)やポンプ車の圧送能力、台数、位置などの施工条件を入力し、最適な打ち込み順序と打ち重ね時間の間隔を瞬時に自動計算する。算出した結果を3次元画像で可視化して確かめられ、ポンプ車の必要台数や最適な配置などを事前に検討可能。
※2:ブロック配置とはコンクリートを打込む範囲の打込み順序や打重ね時間の計算に必要となる施工時の分割エリアを指す。
また、施工中にコンクリート供給能力や可動ポンプ車台数が変わるといった計画変更が生じた場合でも、施工条件を再入力することで、最適な打ち込み順序などを再計算し、迅速な対応が図れる。さらに、技術者の経験に依存せず、誰でも最適な打ち込み計画が立てられる。
大成建設は、京都府にある天ケ瀬ダム放流設備の建設工事で、T-Con.PASを適用し、最大打ち重ね時間の間隔が約2割短縮でき、コールドジョイント発生リスクの低減効果を確認した。現場への導入結果を踏まえ、施工時の品質向上やコストカット、事前検討作業の短縮による生産性向上などの効果が期待できることが分かった。
今後、土木・建築分野を問わず、T-Con.PASをコンクリート構造物の品質向上を目的に、施工現場への導入を進めていく。
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