新菱冷熱工業が“新型コロナ対策”で、宣言解除後に安定的な換気構築の提案に注力:産業動向
新菱冷熱工業は、新型コロナ感染症の拡大に伴い、営業と設計担当者による「換気見直しチーム」を編成して、医療施設の院内環境を守る換気の見直し提案を本格化させる。
新菱冷熱工業は、感染症対策への関心の高まりを受け、地域の基幹病院や医療施設などを中心に、院内環境をより安全に保つ、換気の見直し提案に注力していく。
数値流体シミュレーションでリニューアル計画を立案
同社では、「新型コロナウイルスの感染拡大防止に空調技術で貢献できないか」と、2020年4月から社内で議論を重ね、現時点で最も効果的な手法として、安定的な換気を構築する提案をしていくことを決めた。その上で、営業と設計担当者による換気見直しチームを新たに組織し、全担当者は、新型コロナウイルスの感染経路や空調設備と新型コロナウイルスの関わりなどに関する知識を事前に学んだ上で、緊急事態宣言が解除された地域から順に提案を進める。
換気の見直しには、換気の状態を高精度に再現可能な数値流体シミュレーション(CFD)技術を駆使する。CFDでは、現状の状態を再現し、院内空気の“よどみ”を見つけて風の流れを明らかにし、より安定的に空気を入れ替えるためのリニューアル計画を立案する。CFDは、気流や温度分布などをシミュレーションで再現する手法で、空気環境を分かりやすく可視化。高性能サーバを用いた解析精度は、誤差±5〜10%以内と精密で、実環境を高精度に3次元化する。
さらに、CFDはエアロゾル粒子の濃度分布もシミュレーションすることが可能で、病原体などの空気中での挙動を表せる他、リニューアル前後の環境改善効果を比較することもできる。新菱冷熱工業は、CFDによるシミュレーション解析に30年前から取り組み、解析数は毎年100件以上にものぼる。
また、最近の病院・医療施設では、目標の室圧を高い精度で維持することが求められるだけでなく、多数の部屋や通路など、広域を対象にした室圧制御へのニーズが高まっている。院内の換気を見直す場合には、施設全体で調整された室圧バランスが崩れないこと、正常なバランスが維持されていることに注意を払う必要がある。この課題に対し、室圧計算プログラムによって、複雑な制御機器の動作を予測することで、安定性の高い室圧制御システムの調整がスムーズに行える。施設の一室を陰圧化をするような要望にも、室圧バランス調整含めて対応する。
他にも、診察室用簡易プッシュプル装置や問診室の感染対策、陰圧室用漏えい防止など、感染症対策の装置や技術でトータルプランニングとして提案する。
診察室用簡易プッシュプル装置(クリーンパーティション)は、患者から発生する病原体を気流で捕捉し、HEPAフィルターで除去。装置の設置によって、病原体曝露(ばくろ)量が5%以下に抑えられるため、医師の感染リスクが低減する。設置時にも、工事が不要で、既設の病院にも導入することが可能だ。
問診室の感染対策は、医師と患者をスクリーンで遮断し、医師側に清浄な空気を供給しながら、病原体を室外に排出・除去する感染対策空調システム。安全性の高い問診環境が整備できるため、パンデミック時だけでなく、通常時の外来でも感染対策効果が見込める。
陰圧室用の漏えい防止装置「SEPAREA」は、病室と廊下の間に、0.3メートル毎秒以下の低風速で水平な一方向流の空気を流し、病原体の流出入を防ぐ技術。SEPAREAは、病室と廊下の間に前室が設置しにくいケースでも、病室への病原体の流出入を防止し、清浄エリアの病原体濃度を汚染エリアの1/10以下に維持する。
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