ホイールローダー遠隔操作システムを開発、実作業に近い操作を再現:山岳トンネル工事(2/2 ページ)
西松建設は、山岳トンネル工事で使用するホイールローダーの遠隔操作システムを開発した。新システムは、オペレーターが車体に設置した複数のカメラ映像を見ながら、坑内のずり運搬作業を遠隔で操作する。今回の開発を足掛かりに今後は、トンネル工事全体の無人化施工を目指し、遠隔操作の技術を掘削に使う他の重機にも応用していくという。
走行速度や走路、バケット稼働圧なども運転室に送信
オペレーターが視認する映像は、ホイールローダーに設置された7台のHDカメラで撮影した映像データを、無線で遠隔操作室に伝送。周辺の安全状況や坑内設備との接近も、遠隔操作室に設置された全周囲モニターで確認することができる。オペレーターの操作信号は、逆順で操作室からホイールローダーへと伝えられる。
映像の送信と同時に、走行速度や走路、バケット稼働圧といった運転データも送られ、一部はコックピットモニターに表示されるとともに、専用PCに運転データとして蓄積される。
安全面では、ホイールローダーの運転操作を自動的に緊急停止(ブレーキ作動・エンジン停止)させる機能を搭載。緊急停止は、ホイールローダーに人が異常接近したことをAIが認識した場合や無線にトラブルが発生した際に自動で作動し、コックピットからも強制的に停止することができる。
実証実験は、屋外ヤードに整備した模擬トンネルで行い、掘削ずりの運搬走路を約50メートルを確保し、ずり投入位置にはクラッシャーを模擬した10トンダンプを配置。断面積約50平方メートルのトンネル形状と、内空側に風管を配置した模擬トンネルを投入位置周辺に設営し、実作業に近い車体でバケット操作を再現できる空間を整備した。
模擬実験の結果、映像や操作の遅延もなく、実機運転に近い遠隔操作が可能であることが確認された。
現場への導入は、国土交通省 北海道開発局 小樽開発建設部発注の「一般国道5号 仁木町外 新稲穂トンネルR側仁木工区工事」で2020年6月から試験運用を開始する。今後は、実施工での試験運用を通して改良を加え、システムの早期実用化を目指す。
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