病院建設から運用まで“100日”、新型コロナに立ち向かう新ソリューションをダッソーとAdenが開発:FM
ダッソー・システムズとAdenグループは、新型コロナウイルス感染症の世界的な広がりを受け、武漢市でわずか14日の期間で病院を建設した取り組みを発展させる形で、医療施設の設計から、施工、運用までのライフサイクル全体を最適化させる新たなシステムの開発に着手する。システムが実用化すれば、病室などの3D空間設計をはじめ、建材や医療機器の製造シミュレーション、施工トレーニングなどが可能になる。
ダッソー・システムズとアジア最大規模の総合ファシリティマネジメント会社「Adenグループ」は日本向けに2020年5月、感染症指定医療機関向けターンキー・ソリューション「Akila Care」を共同開発する意向を発表した。
病院の新設に伴う全プロセスを“バーチャルツイン”
Akila Careのプロジェクトは、世界に先駆け、数日で確立された中国・武漢市の医療機関向けソリューションの実績を踏まえて立案された。
両社は、ダッソー・システムズの3D設計や解析、シミュレーション、インテリジェンス・ソフトウェアをベースにした共通プラットフォーム「3DEXPERIENCEプラットフォーム」と、Adenグループの「Akila Careスマートホスピタル構想」を融合させ、医療施設の建設に関する設計/施工/運用の新しいプロセスの構築を既に進めている。今回、実現を目指すAkila Careは、100日以内に病院を建設・運営するとともに、その後何年にもわたって稼働させることが可能な病院の設計・シミュレーション・開発のための仮想コラボレーション環境を活用。最終的には、竣工後の運営とメンテナンスも最適化することを目的としている。
なお、共同開発の一環として両社は、医療機器、エンジニアリング、建設を専門とする複数の企業とコンソーシアムを結成する。
Akila Careでは、各担当者とサプライヤーが共同作業できる仮想環境にアクセスし、病院施設の“バーチャルツイン”を利用することで、空間計画・モジュール設計・陰圧隔離病室・その他機能の最適化、ビル建材の製造・機器製造のシミュレーション・施工の仮想トレーニングが実現。その後の施設運用の段階では、施設自体と最新鋭の医療機器を連動させたデジタル資産管理ソリューションとして活用し、衛生管理手順のデジタル化と病院の各フロアで作業するロボット監視にも役立てる。
Adenグループの共同創始者Francois Amman氏とJoachim Poylo氏は、「デジタル・プラットフォームを活用し、すぐに設置できるモジュラー型の建物を組み立てることで、最先端の医療施設を短期間に施工し、これまでにない速さで全機能の運用を実現できる。3DEXPERIENCEプラットフォームの使用により、設計変更の工数削減や迅速な開発スケジュールの維持、素早く効率的な期日通りの納入に加え、これからは将来的なパンデミックに備え、医療施設の管理と安全を長期間維持できるようにするソリューションを開発していく」と抱負を述べる。
ダッソー・システムズの取締役副会長兼最高経営責任者Bernard Charles氏は、「提携は、今後急務となるインフラ開発などの大きな変革の実現でも優れた見本となる。ダッソー・システムズは、中国・武漢の雷神山医院の換気システム内で、ウイルスの汚染が拡散する様子をシミュレーションすることで、医療の差し迫ったニーズに対応できることを既に証明している。今回も、医療施設のライフサイクルにおけるさまざまな局面で、知識やノウハウを生かすため、Adenと共同で開発を行うに至った」と共同開発の意義を示している。
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