日立の世界一高い“288.8m”エレベーター試験塔、中国・広州市で完成:EV/ES
日立の中国現地法人「日立電梯」は、広州市の研究開発拠点に、世界最高クラスの高さを誇るエレベーター試験塔を建設した。新設する試験塔は、世界最大のエレベーター市場が形成されている中国での開発力を高め、同国内での地盤を固めるとともに、日立ビルシステムの2020年度事業戦略でターゲットと定めるアジア・中東圏でシェアを拡大させることが狙い。
日立製作所の中国における昇降機製造・販売・サービス会社「日立電梯」は2020年1月、中国・広州市の研究開発・製造拠点内に、世界トップクラスの高さを有するエレベーター(EV)試験塔「H1 TOWER(エイチワンタワー)」を完成させた。
H1 TOWERは、昇降機製品の研究開発や最先端技術の実証を行う昇降機事業のグローバル基盤となる施設。地上高273.8メートルと15メートルの地下部分を含めた建物全体の高さ288.8メートルは、日立によるとエレベーター試験塔としては世界トップクラスの高さだという(完成時)。
塔内には、エレベーターが上下する縦の空間「昇降路」の長さは250メートル以上で、試験用昇降路は計15本で総延長2.2キロ以上。他に超高速エレベーターや大容量エレベーター、ダブルデッキエレベーター、運行管理システムなど、さまざまな技術・製品の開発、テストが行える。
日立グループのなかで、昇降機の製造・販売・アフターメンテナンスを担うビルシステム事業の売上高は6216億円(2018年度)。このうち、中国向けは52.3%で既に事業の柱ともいえるポジションを占めている。そのため試験塔では、中国でのシェアを強固なものにすべく、要望の多い高速・大容量エレベーターの製品開発を進める。
これまでにも、日立グループでは2010年4月にエレベーターの研究施設として、当時高さ世界一の地上高213.5メートルの研究塔「G1TOWER」を日本に建設した。2019年9月には、G1TOWERで開発と試験を行い、中国・広州市の超高層複合ビル「広州周大福金融中心」に納入した分速1260メートルのエレベーターが、「世界最高速エレベーター(The fastest lift elevator)」としてギネス世界記録に認定されている。
新たに完成したH1 TOWERは、日立のグローバルでの昇降機の開発戦略に基づき、日本のG1TOWERと連携して、中国およびグローバルの多様なニーズに応える重要な役割を果たすことになる。
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