海外事業を評価され、大林組やIHIインフラシステム、安藤ハザマがJapaCon国際賞を受賞:産業動向(2/3 ページ)
国土交通省は、海外で建設プロジェクトや技術提供などで活躍する国内の建設会社と中堅・中小建設関連会社を評価し、海外展開を後押ししている。
長大吊橋としては世界第1位の施工速度
オスマン・ガーズィ橋(イズミット湾横断橋)プロジェクトは、工期が2013年1月から2016年6月まで、発注者はNOMAYG JV(PPP事業参画企業による建設施工監理共同企業体)。設計・施工ともに、IHIインフラシステムが担当した。
内容は、トルコ初の橋梁(きょうりょう)を含む道路BOT(Build Operate Transfer)事業であるイスタンブールとトルコ第3の都市イズミールを結ぶ高速道路のうち、イズミット湾をまたぐ区間の橋梁(オスマン・ガーズィ橋)工事。
オスマン・ガーズィ橋の完成により、フェリーで1時間、湾岸の陸路で約1.5時間かかっていた区間の移動時間を6分に短縮し、総延長420キロの高速道路建設で試算される移動時間を9時間から4時間半に縮め、トルコ南西部の発展に大きく貢献した。オスマン・ガーズィ橋は全長2682メートルで、世界第4位の中央径間長1550メートルを誇る吊橋は、48カ月の短工期で竣工し、長大吊橋(つりばし)としては世界第1位の施工速度を記録した。
IHIインフラシステムは、橋梁除湿設備や電気防食設備、飛沫(ひまつ)部にステンレス鋼を採用した他、供用後に遠隔監視システムを用いて、常時モニタリングし早期に異常を把握することで、維持管理のコスト低減も見込む。また、オスマン・ガーズィ橋に適した独自設計基準を策定することで、工事費の最小化を図った以外に、地震対策として、吊橋主塔には世界初の免震構造を導入し、厳しい施工管理で実装した。
風への対処としては、吊橋の供用下にアクティブ制振装置を世界で初めて採り入れた。この他、高速道路BOT事業者の入札準備段階から協力したことで、事業権落札後のEPC(engineering、procurement、construction)契約受注競争を有利に進め、競合国に競り勝って受注した。
マグニチュード7.8の地震でも通行を維持
シンズリ道路(第3工区第2期建設工事・第2工区斜面対策工事)は、工期が2012年7月から2015年3月までで、発注者はネパール国 公共インフラ交通省 道路局。設計は日本工営が担い、施工は安藤ハザマが担当した。
プロジェクトでは、ネパールの首都カトマンズからインド国境にかけて、既存道路の代替路として、日本の無償資金協力により、整備された全長約160キロに及ぶ山岳道路のうち、川沿いの難関区間である最終工区の建設と、豪雨による斜面崩壊部の斜面補強工事が行われた。政治的混乱などで、約1カ月の工事遅延が生じたが、工事エリアの分割化によって、工事妨害による中断の影響を局限化する努力や機材と人員の追加投入が実り、最終的には繰り上げ全線開通を達成した。
国土の8割が山岳地帯のネパールで、日本企業が優位性を持つ道路防災技術も活用された。また、住民から寄せられた要求への対応や住民移転問題では、政治的・社会的混乱の中でも政官と連携して最大限の社会配慮がなされた。工事の影響を受けた住民の一部は、未経験ながら土木作業員として雇用し、きめ細かな安全管理で事故を防いだ。
成果としては、2015年4月25日に発生したマグニチュード7.8の「ゴルカ地震」で、ネパール各地に存在する幹線道路の多くが不通となったが、シンズリ道路は脆弱な地質条件下でも自然災害に対する高い強靱(きょうじん)性を構築していたことで、通行を維持し救援物資運搬の一大経路として役立った。建設時に導入された各種の斜面安定工・擁壁(ようへき)工技術は、「今後の道路建設に生かしていくべき技術」とネパール政府担当官から評されている。
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