【欧州FM見聞録】ヨーロッパ各国で体験したFMから、将来を読み解く:欧州FM見聞録(1)(3/3 ページ)
建設業界でも大手ゼネコンを中心にIoT活用やBIM連携など、先進的な事例が見られるようになってきている。本連載では、ファシリティマネジメント(FM)で感動を与えることを意味する造語「ファシリテイメント」をモットーに掲げるファシリテイメント研究所 代表取締役マネージングダイレクターの熊谷比斗史氏が、ヨーロッパのFM先進国で行われている施策や教育方法などを体験記の形式で解説する。
プロとしてのファシリティマネジャーへの道
ヨーロッパのFMカンファレンスに通うようになって、大学に勤める複数の先生に出会い、ヨーロッパの大学と大学院にはFM学科があることを知った。ヨーロッパには、伝統的に実学(職業教育)の高等教育機関がある。かつて“polytechnique”と呼んでいたが、最近のEUでは、“University of Applied Science”と呼称している。筆者の憧れたオランダでは、特にこのFM教育が盛んであり、英語で受けられるFM大学院(修士)があることも知った。そして2000年の夏から1年間、英語で受講可能なFM大学院の1つSaxion大学のFM大学院で学べた。
さらに、プロ志向の強かった筆者は、FMアウトソーシング(特に第1世代)に強い憧れを持ち、修士修了後には、英国のCBX(当時既にSulzer社に買収され第2世代になっていたが)で1年間の業務研修をすることができた。この2つでの学びは、FMにデータに基づく科学的アプローチがあることを知れた機会であった。当時はFMIS(FM情報システム)と呼ばれていたコンピュータシステムがあることを知ったのもこの頃である。FM教育、FMのシステムについては、別途触れたい。
2002年に帰国し、筆者は日本でもFMアウトソーシングのビジネスに参加することになったが、同年から2010年にかけては、FMに大きな変革のうねりが押し寄せることとなる。
著者Profile
熊谷 比斗史/Hitoshi Kumagai
ファシリテイメント研究所 代表取締役マネージングダイレクター。1986年に富士ゼロックスにソフトウェア開発として入社。1990年に同社のオフィス研究所に異動後は一貫してファシリティマネジメントに携わる。JFMAへの出向やオランダFM大学院、イギリスFMアウトソーシング会社での研修、国内でのFMビジネスを経験する。2007年、イギリス系不動産コンサル会社DTZデベンハム・タイ・レオンに入社。グローバルFM/CREコンサルタントに従事。その後独立し、2012年にファシリテイメント研究所を設立し、今日に至る。ユーザーのイクスピリエンス(感動体験)を創るホスピタリティFMを目指し、CREやワークプレースプロジェクト、FM管理業務からFMのIT分野まで幅広くコンサルティングを提供する。
★連載バックナンバー:
『欧州FM見聞録』
■第3回:欧州のFM最新潮流を知る「IT化によるイノベーションの時代へ」
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