大林組が建設現場の資材搬送を自律化するロジスティクスシステムを開発:ロボット
大林組は、AGVとエレベーターを連携して制御し、階数を問わずに建設資材の自律的搬送を可能とするロジスティクスシステムを開発した。作業員の負担軽減と安全な自律ロジスティクスを両立できる技術として、建設現場への導入を進めていく。
大林組は2020年2月19日、建設現場内の資材搬送において、AGV(Automated Guided Vehicle 無人搬送車)とエレベーターを連携制御することで、階数を問わずに自律的な搬送を可能とするロジスティクスシステムを開発したと発表した。
本システムを稼働させる場合、あらかじめ各フロアを複数エリアに区分した上で、搬送元と搬送先のエリアを指定して資材の搬送スケジュールを入力する。
建設現場内に設置した複数の天井カメラの映像から資材の位置をシステムが認識すると、事前に用意した地図に従って搬送先まで自律的に経路を設定する。同時に、複数のAGVに搬送指示を与え、エレベーターも連動して制御する。
作業時間中に利用する場合は、天井カメラが作業員を検知し、人数の多いフロアへ優先的に自動でエレベーターを呼び出すため、資材の揚重効率を下げることはない。搬送スケジュールが変更がされた場合でも、管理者が搬送先を修正するだけで、システムが自動でAGVとエレベーターの制御を組み替えられる。
本システムの指示下で動作するフォークリフト型AGVは、大林組とスイスStoecklin Logistikが新たに共同開発した。レーザーセンサーで計測した資材幅に合わせた安全領域を自動設定し、最適経路を選択する自律走行ナビゲーションテクノロジー「ANT」を搭載している。本システムはANTとAPIを介して各情報を交換し、状況に応じた指令をAGVへ送信する。
建設現場の天井に設置したカメラの俯瞰(ふかん)画像によって、荷物の位置と置き方に問題がないかをチェックできるほか、作業領域への人の侵入をAIが瞬時に検知し、危険と判断した場合には、速やかににAGVの動作を停止するなど、安全な自律ロジスティクスの要請にも応える性能を持つ。
従来システムとは異なり、メインサーバが複数のAGVとエレベーターの状況を把握し、各AGVが備える安全装置と併せて統合的に管理することで、安全性がさらに高まった。管理者はタブレットなどの端末でAGVの位置やエレベーターの稼働状況を常時監視できるため、異常があれば即座に対応できる。
大林組は、これまでもフロア内で資材を自動搬送するAGVを開発してきたが、搬入した階から上層階への揚重の際は、作業員を介在させてエレベーターを操作する必要があった。
本システムの場合、Web上で入力した資材の搬送スケジュールに基づき、搬入階から目的地までの搬送を完全に自動化できるため、作業員は資材運搬作業から解放され、施工業務に専念できる。
今後について同社は、2020年春から本システムを複数の建設現場に導入して効果を検証していくとともに、従来の低床式AGVも本システムの指示下で制御できるように改良し、工事条件に合わせて最適なAGVを導入できる体制を構築していくとしている。
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