三菱電機が110億円を投じ、人工衛星の一貫生産工場を建設:産業動向
三菱電機が神奈川県鎌倉市で、110億円を掛けて建設を進めていた人工衛星の組み立てから試験までを行う「新衛星生産棟」が2020年2月19日に竣工した。
三菱電機は2020年2月18日、神奈川県鎌倉市の人工衛星を製作している鎌倉製作所内で建設していた人工衛星の組み立てから試験までを一貫で行う「新衛星生産棟」が、同年2月19日に竣工と公表した。
人工衛星の並行生産能力を18機に増強
新衛星生産棟では、人工衛星の並行生産能力をこれまでの10機から18機に増強し、今後伸びが見込まれる国内の官需衛星と、国内外における商用通信衛星のニーズに対応することで、宇宙システム事業の規模拡大をねらう。
棟内には、大型スペースチェンバーや大型振動試験機などを設置し、人工衛星の組み立てから試験までを一貫で生産できる体制を構築する。生産品目は、観測衛星/通信衛星/測位衛星などの人工衛星システムと、人工衛星搭載器。
また、サプライチェーンマネジメントや開発設計の全業務プロセスを改善してトータルコストを削減する「e-F@ctory コンセプト」を導入しているため、受注から組み立て、出荷までの生産情報を一括で管理。生産性や品質の改善サイクルも高速化され、納期の短縮と高品質かつ高効率な生産体制が実現する。
省エネ対策では、ヒートポンプ式空調システムや約1300基のLED照明、スーパー高効率変圧器(3.3kV/420V/200V/100V)など、三菱電機製の最新省エネ機器を多数採用することで、消費エネルギーの低減も考慮している。
新工場建設の理由としては、日本政府が2019年、米国が構想する月近傍有人拠点「Gateway」への参画を決定したことで、今後の官需衛星需要の拡大が期待されていることと、グローバルでも小型通信や観測衛星の市場拡大が予測されていることが挙げられる。
これまでに三菱電機では、静止気象衛星「ひまわり7/8/9号」、日本初の国産商用通信衛星「スーパーバードC2」、高精度の位置情報提供サービスを目指す準天頂衛星システム「みちびき」、カタールの国営衛星通信事業者から受注した通信衛星「Es’hail-2(エスヘイル2)」など、実利用衛星の開発や製造を担当してきた。
そこで新衛星生産棟では、これまで以上に人工衛星の並行生産能力を増強するとともに、e-F@ctory コンセプトで生産効率をアップさせ、品質・コスト・工期の競争力を強化することで、宇宙システム事業のシェア拡大を目指す。
新衛星生産棟の概要は、所在地が神奈川県鎌倉市上町屋325番地、S造4階建て、建築面積は約6700平方メートルで、延べ床面積は約1万3300平方メートル。
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