遠隔ロックボルト打設と同時に装薬孔を穿孔できる多機能機械を開発:山岳トンネル工事
フジタは、ロックボルト打設と後工程となる装薬孔穿孔を効率化する取り組みを進めている。このほど、古河ロックドリルと共同で、両作業を同時に行える多機能機械を開発した。
大和ハウス工業グループのフジタは2020年1月28日、古河ロックドリルと共同で、ロックボルト遠隔打設装置「ロックボルタ」を搭載した国内初の多機能機械を開発したことを発表した。
20%の省人化と10%の作業時間削減
新機械は、ブームが3本あるドリルジャンボの中央ブームにロックボルタを搭載することで、トンネル支保(しほ)部材であるロックボルトを遠隔打設しながら、左右のブームで火薬を詰めるための装薬孔(そうやくこう)を穿孔(せんこう)できる。作業の効率化とともに、ロックボルト打設時に切羽(せっぱ)近傍での人力による作業も避けられるため、安全性を高められる。
具体的には、新機械は、ロックボルタの収納マガジン(ターレット)にロックボルトを最大8本充填し、遠隔でロックボルト打設が行え、穿孔、モルタル充填、ロックボルト挿入の一連動作を作業者が切羽近傍に近寄ることなく進められる。ブームドリルジャンボに取り付けられた左右のブームを使用し、次工程となる発破孔(はっぱこう)の同時削孔が可能になり、生産性向上に役立つ。
従来、山岳トンネルの工事は、発破(装薬孔穿孔、装薬、発破)、ズリだし、支保工(鋼製支保工建て込み、吹付けコンクリート、ロックボルト打設)の繰り返しが基本作業だった。
これらの工程の中で、ロックボルト打設と後工程となる装薬孔穿孔は、ドリルジャンボを使った連続作業だ。ドリルジャンボの3ブームを有効活用し、これらのプロセスをスリム化するために、両社でロックボルト打設と装薬孔穿孔を同時に実施する多機能機械の開発に取り組んできた。
また、一般的にロックボルト打設は、ロックボルト挿入孔の穿孔をドリルジャンボで対応するが、定着モルタル充填やロックボルト挿入は切羽近辺での人力作業となる。切羽近傍の業務は、掘削面から岩石が落下して作業者が被害を受けるリスクがあり、安全性を確保する対策が求められていた。こういった課題を解消するために新機械は開発された。
ロックボルタは既に、群馬県利根郡の新三国トンネル工事に導入し、実証試験と実用化に取り組んだ。この結果、トンネル掘削で、1回の掘削当たり、全長4メートルに及ぶ13本のロックボルトを安全に正確に打設可能なことを確かめたという。また、ロックボルト打設と装薬孔穿孔を同時穿孔で行うことで、20%の省人化と10%の作業時間削減を実現した。
新機械は、さまざまなトンネル工事での活用が見込まれるため、今後、さらなる生産性と安全性の向上に向けて導入を進めていく予定だ。
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