湿潤養生と浮遊粉じんの除去を同時に行える「E-WALKミスト工法」を開発:山岳トンネル工事
戸田建設は、トンネルを長期間安全に使用するために、覆工コンクリートの耐久性を高める取り組みを進めている。
戸田建設やマシノ、有光工業は2019年12月9日、「E-WALKミスト工法」を開発したことを発表した。
トンネルを長期間安全に使用するために
E-WALKミスト工法は、ミスト噴霧(ふんむ)装置を設置した移動架台を自動で往復走行させることで、トンネル覆工コンクリートの湿潤養生と浮遊粉じんの除去を効率的に行える。
架台上部に設置した噴霧ノズルを180度回転させながらミストを噴霧することで、覆工コンクリート面と坑内の両方向への噴霧を実現した。覆工コンクリート面への噴霧時は、コンクリートの湿潤(しつじゅん)養生が進められる。坑内空間への噴霧時は、帯電ミストの静電気力により浮遊粉じんを除去。噴霧ノズルの回転速度や噴霧角度は任意での設定に応じているため、現場条件に合わせたミストの噴霧が容易だという。
E-WALKミスト工法をトンネル工事に適用することで、覆工コンクリート表面の相対湿度を95%RH以上確保でき、乾燥によるひび割れの発生を抑制することに役立つ。また、テストハンマーによる強度推定で、覆工コンクリートの圧縮強度が約10%向上することを確認しているという。さらに、無対策の場合と比較して、坑内の粉じん濃度を約50%低減することが確かめられている。
今回、3社がE-WALKミスト工法を開発した背景には、トンネルを長期間安全に使用するために、覆工コンクリートに高い耐久性が求められていたことがある。高い耐久性を維持するには、乾燥などによる破損を防ぐため、セントル脱型後、一定期間の湿潤養生が不可欠だという。
だが、トンネル表面の覆工コンクリートは、露出面積が大きく水分が拡散しやすい形状のため、湿潤状態の保持が難しかった。そのため、これまでは長大な養生台車を使用する工法や養生シールをコンクリート表面に貼り付ける工法などの技術が採用されていたが、多くの労力が必要だった。
加えて、トンネル内は、掘削作業や工事車両の走行によって浮遊粉じんが発生する。密閉空間であるため、粉じん濃度が坑外と比較して高く、作業員の健康や安全を守ることが問題となっていた。こういったネックの解消もE-WALKミスト工法開発の要因になった。
今後、戸田建設は、E-WALKミスト工法をトンネル工事に積極的に導入し、トンネル覆工コンクリートの品質を高めるとともに、改良を推進し、トンネル工事以外への展開も図る予定だ。
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