深さに関係なく運搬効率が一定、土砂搬送が可能なぜん動ポンプの試験機を開発:スマートコンストラクション(2/2 ページ)
都市部では、土地の有効活用として、建物の地下が深くなる傾向があり、掘削工事に多くの時間をかけている。そのため、業界では生産性向上を目的に、掘削装置や技術の能力を高めることが望まれている。こういった状況を踏まえ、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)や竹中工務店らは、掘削工事を円滑に行える新装置を完成させた。
土砂搬送の動作を制御可能に
土砂をぜん動ポンプで運ぶには、土砂の粒子の性状と含水比で異なる搬送抵抗をどのように緩和させるかが課題だった。そこで、土砂の粒子の性状・含水比・搬送特性の関係を分析し、土砂の締め固まりによる搬送抵抗を緩和するようにゴムチューブの形状に工夫を加え、搬送経路上で含水比を調整できる機構を設けることで、土砂搬送を可能にした。
土砂搬送ぜん動ポンプは、小型機と、直径が2倍の大きさの大型機をそれぞれ製作したという。大型機は、スケール効果と容量増加の相乗効果により、小型機と比較して、8倍以上の容積の土砂を運べる。
大型機は単なる大型化だけにとどまらず、連結部材の削減・部材形状の簡素化・ユニット交換の省力化・フレームの目詰まり防止、人工筋肉とゴムチューブの耐久性を考慮した再設計など、建設現場での実際の運用を見据えた各種改良を施した。ぜん動ポンプの制御プログラムとインタフェースも併せて開発することで、柔軟な動作を制御することが可能になった。
今後、試運転を経て、搬送効率に対するスケール効果の検証や制御の最適化などの技術課題を解決するための実験を2020年6月末まで実施する。加えて、ポンプ内部のセンシングとそれに連動した自動制御システムの開発によるさらなる搬送効率の向上を目指すという。なお、本試作機の設計・製作は中央大学発ベンチャー企業であるソラリスが実施している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 開発期間が終了、河川の土砂災害に対応する「水陸両用の運搬ロボット」
まだ記憶に新しい、千葉県で相次ぐ甚大な被害をもたらした台風15号・19号をはじめ、近年国内では大規模な水災害が頻発している。河川周辺の災害は、川沿いの道路が土砂で埋まってしまうことも少なくなく、復旧に向かう建設重機が通れない事態も起きている。次世代無人化施工技術研究組合では、こうした現場でも、無人化施工を可能にするため、半水中重運搬ロボットと遠隔操作システムの開発を2014年度から着手し、実現場で検証を重ねてきた。 - 建設現場用の建設搬送ロボ、台車に載せた1トンの資機材を自動でけん引
東急建設は、THKと共同で、資機材搬送ロボットの開発を進めている。日々環境が変わる煩雑な建設現場での運用を想定し、段差や複雑な経路を自動で走り、特別な知識が無くても、カラーコーンの配置だけで簡単にルートを設定できる。 - 搬送土量を非接触で計測、ベルトコンベアの利用を効率化
大成建設はシールドトンネルや山岳トンネル工事で使用する連続ベルトコンベアの搬送土量やベルト傷を、「光切断法」を用いて非接触・高精度に計測・管理できるシステムを開発した。掘削土砂を搬送する際のベルトコンベア作業を効率的に管理できるという。 - 大林組の土量測量アプリに“AR版”が登場、作業時間を9割短縮
大林組が開発した測量アプリ「スマホdeサーベイ」がARアプリ化され、2019年10月中旬から一般向けに発売される。