奥村組ら3社、覆工コンクリートの高速打設システムを高度化:産業動向
奥村組、テクノプロ、北陸鋼産は、山岳トンネル工事で急速施工を実現する手段である「覆工(ふくこう)コンクリート」の高速打設システムを高度化を発表。不特定箇所でのひび割れ発生リスクの低減する。
奥村組、テクノプロ、北陸鋼産は、山岳トンネル工事で急速施工を実現する手段である「覆工(ふくこう)コンクリート」の高速打設システムを高度化したと発表した。ひび割れ誘発目地を形成する技術を同システムに付加することで、不特定箇所でのひび割れ発生リスクの低減を図った。
覆工コンクリートの高速打設システムは、「前後の同時打設」「左右の同時打設」「圧入方式を併用する打設」する要素技術で構成しており、ロングスパンセントル方式(18〜21メートル)による1回の打設(だせつ)時間を、通常スパン(10.5メートル)より短縮できる。しかし同方式においては、コンクリートのスパン長が長くなることから、温度低下や乾燥などによる不特定箇所でのひび割れ発生リスクを低減することが課題となっていた。
ひび割れ誘発目地は、セントル中央に複数枚の金属製目地板、セントル周方向に連続して設置し、地板を引き抜くことで形成する。さらに目地板には、ポリマーを混合したアクリル系樹脂を塗布することにより、引き抜きに特殊な設備を使用することなく容易に施工できるという。セントル脱型後のひび割れ誘発目地とその周辺のコンクリートの目視評価では、ひび割れ誘発目地部から採取したコンクリートコアにより、ひび割れを目地位置に誘発できることが分かった。
模擬トンネルを使用した実証実験では、流動特性の異なる数種類のコンクリートを使用し、さまざまな条件下において、同システムに付加したひび割れ誘発目地を形成する技術の施工性、品質および効果を確認した。 また、ひび割れ誘発目地を形成した覆工コンクリート側壁部にて、背面のひずみや表面の変位を計測するとともに、コンクリート表面の観察も長期間実施。約1年経過した時点でも、不特定箇所でのひび割れは発生しておらず、ひび割れ誘発目地による不特定箇所でのひび割れの抑制が図られたことを確認したという。
今後は、同システムの実工事への本格適用に向けブラッシュアップを図るとともに、山岳トンネルの急速施工技術として積極的に提案していく。
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