高剛性・高耐力の地下壁を構築する「J-WALLII工法」:新工法
大林組ら3社は、仮設の土留め用鋼矢板を利用して、薄い部材厚で高剛性・高耐力の本設地下壁を構築する「J-WALLII工法」を開発した。
大林組、JFEスチール、ジェコスの3社は、仮設の土留め用鋼矢板を利用して薄い部材厚で高剛性・高耐力の本設地下壁を構築する「J-WALLII工法」を香川県庁舎東館耐震改修工事に初適用した。
現在施工中の香川県庁舎東館耐震改修工事では、地中に地下ピットを設けて建物下部に免震装置を装備する免震レトロフィット工法を採用している。
受注段階では、地下ピット外周の土留め壁として仮設の鋼矢板を設けた後に、新設の地下壁を構築。その後仮設鋼矢板を撤去する従来工法で計画されていたが、地下壁が隣地境界線と接しているうえ、設置スペースがわずか600ミリ程度しかない部分があるため、本工事ではJ-WALLII工法を採用し、狭あいな場所での地下壁の構築を実現した。
新工法は、鋼矢板に鉄筋コンクリートとの定着用のCT形鋼および定着用鉄筋をあらかじめ取り付けた「ビートルパイル」を仮設の土留め壁として利用。掘削後に鉄筋コンクリートと一体化させることで、本設の地下壁とする本工法を採用し、壁厚550ミリの地下壁を施工した。また、部分的に2階バルコニーで上部に制限を受ける場所がありましたが、ビートルパイルを3分割し、溶接による継手を設けることで問題なく施工したという。
また、供用中の庁舎や隣接する建物の利用者への影響を最小限に留めるため、低騒音・低振動の油圧圧入機によりビートルパイルを圧入した。ビートルパイルにはCT形鋼などの突起物が付属しますが、圧入時の施工精度や施工スピードは、通常の鋼矢板で施工した場合と同等であることを確認した。
ビートルパイルが鉄筋の機能を代替するため、地下壁の配筋量は従来の工法と比較して半減する。その結果、配筋作業に要する時間を50%に短縮するとともに、従来工法と比べて壁厚を薄くできるため、壁に必要なコンクリート量も60〜80%まで削減した。さらにビートルパイルを地盤側一面に配することで、高い止水性も確認した。
今後は、ニーズが増加すると思われる都市部の難しい条件下での開削工事、特に、狭あい地での立体交差や掘割道路、ビルや地下駅の改良工事におけるエレベーターシャフト、地下通路などにも本工法を適用していくとしている。
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