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インタビュー

AirbnbやLINEのオフィスを手掛けた設計事務所が「食堂」を運営する理由――。“細胞からデザインする”働き方改革Architecture & Interior Design alternatives―Vol.2(2/4 ページ)

ここ最近では2019年4月1日に施行された「働き方改革関連法」以降、国内の企業でも、テレワークやフリーアドレス制、ABW(Activity Based Working)など、働き方そのものや働く場所に変化の兆しが見られる。建築設計事務所「SUPPOSE DESIGN OFFICE」は、東京・代々木上原の事務所に誰もが足を運べ、多忙なワーカーの食生活を改善する「社食堂」を併設している。LINEやAirbnbなど、先進的なオフィス空間の設計も手掛けている設計事務所が考える働き方改革のアプローチをインタビューから探った。

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設計の根底にある「曖昧な結界」

 その後の案件でも、設計領域にとどまらず空間にまつわるものは、できるだけ提案するようにしたという。「(例えば)レストランに行くと、外観や内装は良くても、他に外注してしまうメニューや店舗のロゴ、サインにまでは気が配られておらず、空間全体でみたら不釣り合いなことが少なくない。メニューがラミネート加工されていたりすると、簡易的で寂しい印象になってしまう。2人とも、空間を創るのは元から好きだったので、そういった細かい部分も含めて、おせかっいにもなりかねないが、提案の中に盛り込んでいった」(吉田氏)。


オーストラリア・キャンベラの複合施設「New Acton Nishi」 Photo by Tom Roe

「New Acton Nishi」 Photo by Tom Roe

 転機の一つとなったのが、展示会のディレクターが旧知の仲だったデザインのエキシビションイベント「DESIGNTIDE TOKYO(デザインタイドトーキョー)2008」。東京ミッドタウンのホールが、インテリア、プロダクト、建築、グラフィック、テキスタイル、ファッション、アートなどの各分野のクリエイター作品を展示するショーケースとなったデザインの祭典だ。メイン会場の設計を任された吉田氏と谷尻氏は、建築家としての視点を持ったブースデザイン=展示会で良くあるリースパネルを掲示するのではなく、新しい建築のカタチを模索した。


吉田愛氏

 吉田氏は、DESIGNTIDE TOKYO 2008でのデザインコンセプトについて、「一つの作品に一つの建築をとした。一つの作品を壁で完全に仕切ってしまうのではなく、布で建物の空間を形づくり、ブースがいくつも立ち並ぶことで、都市を見るような感覚をねらった。布は四方を完全に覆ってしまわずに、下に人が通れる開口部を設け、布が光を透過するのと合わせて、スペースを区切りながらも、全てが緩やかにつながっている、物理的に分けるのではない意識として存在する“結界”をイメージした」※1

 通常、立ち上がる建物には、支える構造が必要だが、この作品では、逆止弁のアルミ風船にヘリウムガスを入れて、天井に浮かばせて布素材を吊(つ)るした。石や煉瓦(れんが)を積み上げる「組積造」の表面にも似た布の縫い合わせは、ボランティアのサポーター学生とともに、施工にも参加して完成させた。

 これが起因となり、翌年の2009年にもDESIGNTIDE TOKYOのプロジェクトを引き受けることになった。この年は、透明な緩衝材の外側に、綿をスプレーのりで貼り付け、通常の壁のように物質的な重力を感じさせない、雲を形どったもので空間を曖昧に仕切り、屋内に自然の風景を創出した。

 2年間にわたる東京でのインスタレーションをきっかけに、拠点を都内に構えることを検討した。同時期にクライアントも、これまでの個人オーナーの店舗中心から、企業案件へとシフト。そのなかでも、吉田氏が思い出深いと話すのがメガネショップ「JINS」の店づくりだ。

※1「DESIGNTIDE TOKYO 2008」でのプロジェクト

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