大林組が「ハイスペックマイクロパイル工法」改良、適用範囲拡大へ:新工法
大林組は、同社が開発した構造物基礎を補強する高性能小口径杭工法「ハイスペックマイクロパイル工法」を改良し、適用範囲を拡大した。適用可能な杭径の拡大や硬い岩盤への適用、土留め杭タイプの新たな開発により、既設構造物の補強工事の合理化が進む。
大林組は2019年9月、同社の開発した高性能小口径杭工法「ハイスペックマイクロパイル工法」を改良し、適用範囲を拡大したことを明らかにした。
ハイスペックマイクロパイル工法は、二重管削孔した地盤に杭となる鋼管を挿入し、鋼管内部と周囲をセメント系材料で固め強化していく工法。コンパクトかつ軽量な機械で施工できるため、大型重機の使用が難しい狭いスペースや、高さ3.5m程度の空間でも施工できる。
これまで同工法に適用可能だった鋼管径は165.2mmと190.7mmだけだったが、今回の改良により267.4mmが加わった。杭径拡大により杭1本当たりの補強性能が増し、施工箇所当たりの杭本数も削減できるようになったことで、工期の約3割短縮、コストの約1割低減を実現した。
またコンパクトかつ軽量な本体を維持しつつ、硬質地盤の杭打ちに適用するダウンザホールハンマーを活用できるようにしたことで、国内のほとんどの岩盤で杭の構築が可能となった。
今回の改良では、特殊冶具による先端部の強化などの従来工程を省略したことで、低コストな土留め杭としての適用も可能となった。大型の杭打ち機を使用する土留め施工では大規模な足場が必要となり、工費・工期が増大しがちだったが、コンパクトで軽量な機械を使用する本工法を採用することで、足場の組み立て・解体にかかる工期は最大約4割、使用部材は最大約2割の削減が可能となる。
より効率的に土砂排出を可能とする乾式削孔方法も新たに開発された。地盤深部まで杭を構築する補強杭の施工では、削孔時の地下水湧出による軟弱な土砂の排出が課題だったが、空気の圧送と少量の泥水を用いる乾式削孔方法により土砂の処分費も低減できる。
大型重機を使用する構造物基礎の補強工事では広い施工スペースが必要となる。そのため、交通量の多い都市部では長時間の交通規制を要し、また道が狭く傾斜もきつい山間部では施工自体が困難という問題があった。
かかる課題に適応する工法として開発され、成果を上げてきた本工法だったが、大きな構造物を補強する場合、施工箇所当たりの杭の本数が増加し、工期やコストがかさむケースがあった。また改良前は砂・粘土・砂利のような軟らかい地盤を対象としていたため、硬い岩盤には適用できなかった。
今回の改良によりこれらの課題が解消されたことで、今後さらなる増加が予想される構造物基礎の補強工事や狭スペースでの土留め杭工事に対して、本工法を積極的に適用できるようになる。
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