激甚化する水災害に対し、「締切工技術」と「3D浸水ハザードマップ」を研究開発:令和元年度土木研究所講演会(2/3 ページ)
寒地土木研究所は、北海道開発の推進に資することを目的に設立された国内唯一の寒地土木技術に関する試験研究機関。最新の研究では、近年頻発する台風や豪雨などに伴う、水災害に対し、堤防決壊の早期対応と3D浸水ハザードマップによるハードとソフト両面から防災技術の開発を進めている。
バックホウとオートフックを組み合わせて検証
これらの締切工事の要点を踏まえ、資材投入の効率化に向けた実験は、北海道内の緊急工事で実施した。事前調査で、工事の初期段階では全ての事例で、資材の投入にクレーンではなくバックホウを使用していたため、バックホウによって決壊口に見立てた箇所に、合計5種類の方法でそれぞれの作業効率を計測した。
5種類の方法は、1.1個ずつブロックを投入、2.3個並べて投入、3.自動でブロックが切り離されるオートフックを使用、4.オートフックにより、斜面でブロックを離して直接投げ入れ、5.例外的にキャリアダンプで積み荷のブロックをそのまま斜面に落とす。
実験結果としては、バックホウのブロック投入速度はおおむね1個あたり2分(クレーンは1個あたり3分)。オートフックは、大幅な時間短縮にはならず、玉掛け作業で30秒程度長くかかり、斜面にそのまま落とすやり方では、ワイヤの絡まりにも注意を要する。ただ、玉掛けの訓練次第で作業効率が向上する余地はあり、現場条件によって適切な方法を行うべきとされた。
ハード対策のもう一つ、高流速下の水流・水面波・掃流砂による構造物の安定性評価と維持管理は、急流河川で洪水時に水面が三角状に切り立つ“三角波”が生じ、河川構造物を押し流すなどの影響を与えていることが想定されるため、このメカニズムを解析することが研究の主眼にはあった。
検証では、フルード数、無次元掃流力、水路幅-水深比などの幅広いパラメータを設定した27のケースでテストし、12のケースで三角波の発生を確認した。従来は、低水路の中央付近で発生報告が多かったが、河道内のより広い範囲で同時に起きる可能性も示唆される結果となった。
三角波によってブロックが移動するかの室内実験では、平たん固定床(粗度付き)と移動床で模型ブロックの状態を比較。三角波が発生する場所では、護岸などのブロックが移動しやすくなり、平たん固定床に比べ移動床では、3.5倍の重さが無いと動いてしまうことが判明した。流況測定では、流下方向の流速増大箇所が生じることがブロック移動の要因とされた。
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