感性価値に重点を置く独自のブランディング手法、工務店の常識を変える富裕層の顧客の増やし方:A-Style フォーラム(3/3 ページ)
阿部建設は、HP製作への多額の投資やユニークなモデルハウスの建設、顧客の感性に訴える価値の提供などを強みにして、企業ブランドの価値を高めている。
顧客に合わせた感性価値を提供できる体制へ
今後の阿部建設のブランディング構想では、住宅性能や認証などの高水準を目指す基本価値と暮らしやすさ、心地良さなどの感性価値の両軸で展開するという。
阿部氏は、「基本価値はユーザーが住宅を選ぶ決め手にならないが、感性に訴える価値は受注につながるキーポイントだ。例えば、基本価値に重きを置いていた時代は、真壁仕様の和室を最高スペックの部材で仕上げた物件が最善だと信じていた。だが、近年そういった家は顧客が選択しない住宅で、現代のライフスタイルなども考慮した家が選ばれると知り、感性価値に焦点を当てた」と述べた。
基本価値とスペックにとらわれない企業発信の場として、2016年春にフルオーダーメイドモデルハウス「手しごとの家」と本社をリノベーションしたショールーム「黒川ヒュッテ」をオープン。2019年春に木の家を体感するリノベーションモデルハウス「Kitchen SALON」を開設した。また、同年3月に、木造建築に特化した家づくりの場とコミュニケーションスペースの機能を持つ「OMORI WOOD TOWN」を開いた。いずれも、愛知県名古屋市内に建設した。
「黒川ヒュッテは、築50年の平屋づくりをリノベーションした新しいデザインの木の家。国道41号線沿いにあり、地上高7メートル以上の建物は建設できないエリアに位置する。真壁ではなく、大壁の部屋を中心とした家づくりで、見学者からも好評だ」(阿部氏)。
手しごとの家については、「和モダンのモデルハウスで、来場者には、こういった家を建築する場合は坪単価100万が最低価格だと伝えている。最高技術を用いたフラグシップで、実際にこのレベルの建物を建てるなら坪単価120万円はかかる。富裕層を対象にした物件で、高所得のユーザーの開拓に力を発揮している」と手応えを示した。
OMORI WOOD TOWNは、工場や倉庫、手しごとの家、阿部建設の守山営業所、Kitchen SALONで構成されており、モデルハウスと各作業場の連携が円滑になっているという。
kitchen SALONについては、「大きなキッチンがあるが、部屋がない構造となっており、イベントの開催スペースとして建設した。約600万円のキッチンを搭載しており、そのことを入場者に話すと、購入意欲の強いユーザーを見つけられる」(阿部氏)。
阿部氏は、「感性価値を顧客に提供するために、フルオーダーメイドをキーワードに定め、少数精鋭でユーザーの要望に応えられる体制を整えている。そのために、住宅の基本価値に当たる仕事を定型業務とし、外注化や福井コンピュータアーキテクトのソフト“ARCHITREND ZERO”で設計・積算を行い、ダンドリワークスのアプリ“ダンドリワーク”で工程管理するなど、効率化を図っている」と話した。
加えて、「一方、感性価値を高める対策としては、建築家やインテリアコーディネーター、デザイナー、家具屋、ファイナンシャルプランナーなどの専門家と提携し、提案のマンネリ化を防ぐとともに、さまざまな施主のニーズを満たせる製品を提供できるようにしている。また、営業マンや現場監督の役職を廃止し、設計者が1人で営業から引き渡しまでを行う体制を組み立てており、最初から最後まで担当者が変わらないという点で、施主の信頼度を上げている」とまとめた。
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