「ブレーキダンパー」の中低層建物への適用容易に、設計期間“3カ月”短縮・コスト“2割”減:耐震・制震・免震
大林組は、ブレーキダンパーの中低層建物への適用を容易にするため、摩擦接合部の大臣認定と一般評定を取得し、設計期間の短縮とコストの低減を実現した。
大林組は、ブレーキダンパーを構築する「摩擦接合部」について、建築基準法による国土交通大臣の認定を取得したことに加え、日本建築センターでも、大臣認定を活用した部材(ブレース、間柱)としての一般評定を取得したことを発表した。
同社が開発したブレーキダンパーは、建物の柱や梁(はり)の間に設置することで、大小さまざまな揺れを7割程度に抑えることができる制振システム。
制震構造を建築確認申請のみで設計可能に、設計期間を3カ月以上も短縮
その仕組みは、走行中の車がブレーキをかけるように、ステンレス板とブレーキ材(摩擦板)の間で摩擦力が発生し、揺れのエネルギーを吸収する。2001年の初適用以来、虎ノ門ヒルズや東京スカイツリーイーストタワー、JR大阪駅改良工事など、超高層建物を中心に70件以上の採用実績がある。
今回、2つの認証を得たことで、高さ60m(メートル)以下の中低層建物にブレーキダンパーを適用した場合、建築確認申請による手続きのみで制震構造を設計できるようになったため、設計期間が今までに比べ、3カ月以上も短縮される。
これまでは建築確認申請のみによって設計する手法で、ブレーキダンパーを導入した中低層建物の構造設計を行う場合は、構造部材としてブレーキダンパーの効果を反映することができないため、その代わり柱・梁の鉄骨を必要以上に大きく設計する必要があった。大臣認定を取得したことにより、ブレーキダンパーが構造部材として適用可能となり、その効果を反映して柱・梁を最適な大きさとすることができるため、従来比で躯体鉄骨のコストが10〜20%ほど低減される。
摩擦力で地震時の揺れを抑えるブレーキダンパーは、優れた制震効果に加えて、震災後も損傷せず、交換を必要としない高い耐久性を有する。また、オイルダンパーよりも安価に設置できるため、超高層建物だけでなく、近年の度重なる大規模地震の発生を受け、60m以下の中低層建物への適用にも要望が高まっている。
しかし、中低層建物の構造設計では、ブレーキダンパーを含む制震ダンパーを適用して最適な設計を行う際は、超高層建物の設計と同様に、時刻歴応答解析などの高度な設計方法を用いなければならないという問題があり、設計期間の長期化とコスト増加が中低層建物への適用を阻む要因となっていた。
今回の認定により、ブレーキダンパーを適用した高さ60m以下の中低層建物の構造設計を建築確認申請のみで設計して最適化できるようになり、短期間かつ低コストで、耐震性能の高い中低層建物を設計することが可能になった。
大林組は今後、適用が容易になった高さ60m以下の事務所、集合住宅、病院や商業施設などを対象に、ブレーキダンパーを積極的に提案していくとしている。
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