フィンランドのICT施工事例、建設機械のオペレーターがBIMデータを活用:i-Construction推進コンソーシアム(第5回 企画委員会)(3/3 ページ)
国土交通省は2019年7月17日、都内で「i-Construction推進コンソーシアム(第5回 企画委員会)」を開催し、現場でのICT活用の導入状況やICT施工の海外事例としてフィンランドの鉄道工事などを説明した。
BIMの専門家をプロジェクトメンバーに
土木研究所 技術推進部 先端技術チームの新田恭士氏は、ICT施工の海外動向として、フィンランドの事例を紹介した。フィンランドで2017年に着工し、現在も工事中の市街地の既存道路上に建設する路面鉄道計画「Tampere Tramway Project」と、複数のトンネルや橋梁を含む道路プロジェクト「Southern Ring Road of Lahti Project」の事例を用いて、公共事業に対してのBIM導入におけるアプローチの違いについて解説した。
両プロジェクトの共通事項としては、発注者・施工会社・設計会社・施工管理会社を1つの工事受注者と考えるプロジェクトアライアンス方式を採用していることや全てのデジタル情報をクラウドを介して共有すること、BIMの専門家をメンバーに入れていることなどを列挙した。
Tampere Tramway Projectでは、日々の施工状況を発注者や設計者、測量車、オペレーターが、設計、測量、地形、支障物件などの全ての現地情報をクラウドでリアルタイムに共有。
また、オペレーターは、マシンガイダンスだけでなく、土木施工管理に有効な埋設物の位置や出来形のデータをバックホウなどの重機から取得し、「finBIM」というBIMシステムのコードを使い、共有データとして登録している。
「Tampere Tramway Projectでは、オペレーターが重機を運転しながら、必要に応じて、finBIMのコードを追加している。BIMの国際的な標準化活動の観点で見れば、実現場でのBIMの適用実績は貴重なノウハウだ。こういったことを考慮すると、フィンランドはBIMの運用で国際競争における優位性を持っていると考えられる」(新田氏)。
一方、Southern Ring Road of Lahti Projectは、道路延長が4.5キロ(4車線)、橋梁の新設が14橋(架け替え2橋)、トンネルが2本、インターチェンジ3カ所、ランプが5.2キロの工事を行ったプロジェクト。
この事例では、当初開削区間として想定したエリアが12万5000立法メートルの土砂が発生することが判明したため、プロジェクトの途中でトンネル区間に変更し、大規模な土の運搬をトンネルの覆土や遮音堤に変え、コスト削減や渋滞解消を可能とした。
BIMの専門家をメンバーに組み込むことで、残土の使用や運搬計画をBIMで瞬時にシミュレーションできたため、スムーズなプランの差し替えが行えたという。
新田氏は、両事例を総括して、「日本はBIMの国際標準化の議論に乗り遅れている。欧州では、共通ルールとして施設の属性や形状、機能などをデジタル化した“InfraBIM”を導入し、運用しながら追加や修正を進めている。BIMをスケジュールやコスト面でもリアルタイムに使うことで、迅速に意思決定をしている。BIMがシミュレーション技術などの先進技術を取り込むことを推進したり、仕事のルールの最適化に役立っている」とまとめた。
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