ニュース
耐久性を10倍高めた制振ダンパーを開発、「Aichi Sky Expo」に16本を初適用:制振(2/2 ページ)
竹中工務店ら3者は、一般的に使われている鋼材に比べ、疲労耐久性を約10倍に高めた「Fe-Mn-Si系耐疲労合金」を用いたブレース型の制振ダンパーを開発した。同社が設計・施工を手掛けた愛知県国際展示場の西棟に、制振ダンパー16本を初採用したという。
南海トラフ地震の震源エリアに位置する
実物件への適用にあたり、竹中工務店は合金と鋼材との溶接接合部も含めたブレース型制振ダンパーを設計し、制振ダンパーの実大実験による性能評価も行った。その結果、合金の耐疲労性能を生かした良好な性能が得られ、十分な制振性能の余裕度が得られることが設計段階で確認された。耐疲労合金と異材接合用の溶接材料のいずれも、指定建築材料に関する国土交通大臣認定を取得している。
制振ダンパーを採用した愛知県国際展示場の西棟は、100×100メートルの無柱空間の展示ホール、会議室を有する施設で、大きな重量を100メートルの大スパンで支持する特殊構造架構となっている。建設地は、南海トラフ地震で想定される震源に近いエリアのため、余震も含めた多数回の大振幅・長時間の地震動を受ける可能性を考慮し、地震後の事業継続性を維持するため、耐震性能余裕度を大幅に向上させる必要があったという。
そのため、大スパン鉄骨造建物の構造上重要な外周部に配置される制振ダンパーとして、円形鋼管と充てんモルタルで、座屈拘束するブレース心材にFe-Mn-Si系耐疲労合金を使用(部材長約6メートル、最大分担荷重約2000キロニュートン)した本制振ダンパーを、4隅に2本づつ計16本導入した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 中低層建築物に導入可能な“免震”と“制震”のハイブリッド構造、東京都市大・西村教授と東急建設が性能実証
東急建設は、東京都市大学・西村功教授と共同で、油圧ダンパー(制震)と積層ゴム支承(免震)を組み合わせたハイブリッド構造の実用化に向けた実証実験を行い、従来のパッシブ型制震構造を上回る性能を確認した。2020年を目標に実際の建物へ適用し、社会実装に向けた取組みを加速させる。 - 倉庫の積み荷を制振装置の“おもり”に、鹿島が考案した新発想の制震構法
鹿島建設は、2011年の東日本大震災以降に急増した自動ラック倉庫の事業継続(BCP)ニーズに応える目的で、積荷自体をおもりが揺れることによって建物の振動を抑制する制震装置「TMD(Tuned Mass Damper)」の“おもり”として利用する制震構法「Container Damper System(CDS)」を開発した。 - 日大駿河台校舎に適用した「制震ブレース工法」の摩擦ダンパー、設置後20年後の性能を確認
青木あすなろ建設は、日本大学と共同開発した「制震ブレース工法」で設置した摩擦ダンパーが、設置後20年経過しても設置当初の性能を維持していることを確認した。 - 熊本城天守閣に住友ゴムの「制震ダンパー」採用
2016年4月の地震で被害を受けた熊本城の耐震改修工事で、熊本城6階部の大天守最上階に、住友ゴム工業の制震ダンパーを採用することが決まった。