日大駿河台校舎に適用した「制震ブレース工法」の摩擦ダンパー、設置後20年後の性能を確認:制震
青木あすなろ建設は、日本大学と共同開発した「制震ブレース工法」で設置した摩擦ダンパーが、設置後20年経過しても設置当初の性能を維持していることを確認した。
青木あすなろ建設は、日本大学と共同開発した「制震ブレース工法」で、過去に設置した摩擦ダンパーが、20年を経過しても、これまでの地震に耐え、設置当初の性能を保持していることを確認した。
ダイスとロッドの接触面に摩擦力が発生し、揺れを吸収
制震ブレース工法は、鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造建物の外壁面に「摩擦ダンパー」を組み込んだ制震ブレースを設置して、地震時に建物が揺れるエネルギーを効率よく吸収することで、既存建物の耐震性能を向上させる制震システム。
1995年に発生した兵庫県南部地震後の1996〜1998年にかけ、日本大学理工学部海洋建築工学科・北嶋研究室(当時:安達・中西研究室)と共同開発した。2019年1月までに、延べ約100棟、摩擦ダンパーにして約3600基が適用されている。
摩擦ダンパーは、内筒に取り付けられたダイスと外筒に取り付けられたロッドで構成。ロッドの外径はダイス穴の内径より若干大きく、ロッドがダイスによって常に締め付けられた状態となっている。ロッドが軸方向に押し引きされることで、ダイスとロッドの接触面に摩擦力が発生し、地震エネルギーを効率よく吸収する仕組み。
今回、青木あすなろ建設は、1998年に制震ブレース工法を初適用した日本大学理工学部の駿河台校舎5号館で、ダンパーの性能検証を行った。同校舎は、1959年の竣工で、1998年に塔屋と屋上階段の補強工事を行った。
2018年10月に、キャンパス整備事業の一環で、建物が解体されることになったことに伴い、摩擦ダンパーを回収。ダンパーは、20年にわたり、雨風などの厳しい環境にさらされており、この間の経年変化を確認。補強当時と同じ条件で、加振実験を実施した。結果、設置から数十年経っても、摩擦ダンパーは、初期の性能を維持していることが確認されたという。
検証試験では、制震ブレース工法は開発の狙い通りに、過去の地震にも安定した性能を発揮し、経年による劣化も少ないことが証明された。今後も制震ブレース工法の普及を推し進め、大地震時における建物被害の軽減に貢献していくとしている。
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