個人設計事務所がBIMを武器に生き残っていく術、GLOOBEセミナー:BIM(2/3 ページ)
福井コンピュータアーキテクトは、「はじめてのBIM入門セミナー」を開催した。東京会場では、畝啓建築事務所がこれまでに手掛けたBIM案件を披露しつつ、BIMが小規模な設計領域でも有効なことを説いた。
個人事務所が住宅メーカーに対抗する武器としてBIM導入
第2部のユーザー活用事例では、京都府宇治市の畝啓建築事務所を主宰する畝啓(うねけい)氏が登壇。畝氏は、A&C地域施設建築研究所を経て、2006年に空創房一級建築士事務所を開設し、2017年7月には現事務所名に商号を変更した。手掛けている建築物は、主に戸建て住宅や保育園、幼稚園、こども園といった施設建築で、基本的に設計から施工監理までを一貫して受注している。
GLOOBEは2012年4月に導入し、「施主要望の多様化や建築法規の複雑化に伴い、業務量が個人ではこなせない量になり、外注の多用やスタッフの増員では解決しないと思い、BIMを採り入れることとした。BIMを運用することになって始めて、施主は設計図書を見ていないことに気付いた。彼らは完成した建物が欲しいのであって、図面が必要なわけではない。たとえ見える化して、3次元モデルでプレゼンしても、3Dパースへの理解も薄い」。
そのため、BIMを有効に使うためには、「施主に作業経過をその都度、報告しながら進めることが重要だ。BIMモデルは最初から最後まで、いくらでも書き換えられるため、1つのモデルを修正していくことになる。モデルが最終形で完成すると、設計に関わる全ての検討事項も終了する。そのため、モデルがしっかり作れていないと、前の作業に戻って修正しなければならない」とポイントを指摘する。
2次元の図面作成では、単調かつ時間が掛かる“作業”になりがちな「実施設計」の期間をあらかじめ確保する必要がある。BIMであれば基本設計に時間を割くことができ、図面整理などが解消され、空いた時間を新規顧客の営業に充てられるようになり、後工程の負荷が低減され、フロントローディングがもたらされたと畝氏は語る。
モデル密度(LOD:Level Of Detail)に関しては、2次元に置き換えると、100分の1、50分の1、30分の1の3段階の詳細度に置き換えることができ、「1カ所にこだわり過ぎると、100分の1しかできていないのに、妙に密度の高い部分のある歪(いびつ)なモデルになってしまう。完璧に作り込まなくても、大まかなボリュームだけでも、BIMによる打ち合わせは可能だ」(畝氏)。
2次元図面は1から順に書いていかなかればならないが、BIMの場合は、穴埋め的に、できるところからデータを入れられるのが利点。畝啓建築事務所では、2次元レベルで50分の1同等のモデルを作成したら、概算見積りを作るようにしている。なぜならこのフェーズまでであれば、仮に施主から変更を求められても、修正するのが容易だが、次のフェーズに進むと、一部を直すだけで収まりなど全体に影響してしまう。
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