大林組は、近年多発している突風災害への対策の提案や高性能な遮音構造の開発を目的に、東京・清瀬市の技術研究所内にある環境工学実験棟のリニューアル工事で、「多目的風洞実験装置」と「音響実験施設」を更新した。
「多目的風洞実験装置」と「音響実験施設」をリニューアル
環境工学実験棟は、人とそれを取り巻く環境に関する技術開発を行うための施設で、風・音・光・熱・煙・生物などに関連した実験を行っている。1992年の竣工以来、25年以上が経過し、建屋の老朽化だけでなく、地球規模での大きな環境変化、それに伴って猛威を振るう予測不能な自然災害への対応といった新たな研究課題に取り組むためには、既存の装置・機器では不十分という課題があった。
そのため、持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向け、新たな課題を解決するため、実験棟のリニューアル工事を行うと同時に、多様な気流を発生させる「多目的風洞実験装置」と、快適な遮音環境を実現するための検証を行う「音響実験施設」も更新した。
更新後の実験棟の規模は、SRC造・地下2階/地上4階建て、延べ床面積4289平方メートル。地下階では、多目的かつ大型の風洞実験装置の更新とマルチファン型非定常気流風洞装置を追加し、1階では音響実験施設のリニューアルと、環境実験プラザに天井クレーンを新設。さらにロビーの一部を緑化実験室に変更し、2階の執務室は技術展示室に変え、3階は執務室と会議室を屋内環境実験室とサーバ室とし、スーパーコンピュータを配置した。屋上では、防水工事と屋上緑化を行った。
多目的風洞実験装置は、建物周囲の風の流れや建物に作用する風の力を評価するための実験装置。風切り音に関する実験をより高い精度で行うため、装置全体の静音化を図り、81個の小型ファンの回転数や回転方向を個別に制御することで、多様な気流を発生させる「マルチファン型非定常気流風洞装置」を増設した。
従来の風洞装置では、不可能だったダウンバーストや竜巻などの複雑な気流を再現することができる世界初の装置で、さらにマルチファンと同時稼働し、ガイドレールに沿って移動させることで、突風現象そのものだけではなく、現象発生前の状況を作り出す。構造物への影響をより正確に評価でき、突風荷重の評価や対策技術の開発に役立てる。
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