第三者機関では国内初、建機向け電波暗室を備えたEMC試験棟:産業動向
ULは、第三者機関として国内初だという建機を含む大型機器向け電波暗室を備えたEMC試験棟を新設する。EU整合法令の制度変革に伴い変化する法規制や規格への適合を支援する考えだ。
米国の第三者安全科学機関であるULは2019年6月10日、三重県伊勢市の本社内に、建設機械を含む大型機器向け電波暗室を備えたEMC試験棟を新設すると発表した。今回の開設で、国内モビリティ産業のCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)対応支援を目的とする安全コンプライアンス・サービス事業の強化を図る。
建機に対応した国内最大級の電波暗室
伊勢本社のEMC試験棟は2020年7月に竣工を予定している。建機の利用が可能な電波暗室は、国内第三者機関の中ではULのみが保有する仕様になる見通し。寸法が18.2(縦)×23.2(横)×11(高さ)メートル、入口寸法が8(幅)×8(高さ)メートル、耐荷重100トン、大型機器に対応する排気設備を備えており、建機の利用が可能な暗室のスペックとしては国内最大級となる。
電波暗室とは、外部環境に存在する電波の干渉を受けないことに加え、内部から発生する電波を遮断できるように建設された空間。外部の電波環境に影響を受けず、試験対象が発生するノイズ(電磁妨害波)が他の機器に影響を与える危険性があるか、あるいは一定の強さのノイズを受けた時に誤作動が起こらないかといったEMC(電磁環境両立性)を計測する試験設備だ。
EMC試験棟建設には、国内メーカーのEUへの建機輸出が関係している。現在、建機を欧州に上市するには、EU整合法令への適合と機械へのCEマーキングの表示が必要だ。加えて、今後、本体に電波照射が求められると見込まれる。
背景には、EU整合法令の要求の一つである2014/30 EU EMC指令の整合規格「EN 13309:2010」が、最新規格「EN ISO 13766-1,2:2018」へ2021年に強制置き換えを予定しており、EMCで要求される放射イミュニティ上限周波数が拡大することがある。
こうした市場の変化を踏まえ、建機メーカーが国内で建機が利用可能な電波暗室の確保に動く中、ULは、技術革新や制度変革に伴い変化する法規制や規格への建機メーカーの適合をサポートするため、伊勢市にEMC試験棟を開設する運びになった。
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