正答率90%、AIがトンネル地質を自動判定:情報化施工
専門技術者の知見が必要で、時間と手間が掛かるトンネル工事の地質調査。安藤ハザマはこの地質調査の効率化にAIを活用するシステムの開発を進めており、画像から90%以上の正答率で岩石種の判定に成功したという。
安藤ハザマは2018年2月、秋田大学、筑波大学と共同で、複数の波長帯の電磁波を記録した画像である「マルチスペクトル画像」を活用した地質状況自動評価システムを開発し、施工現場における試験運用を開始したと発表した。人工知能(AI)による画像認識技術を活用するシステムで、試験では画像から90%以上の正答率で岩石種を判定できたという。
同社は2016年にAIによる画像認識技術を活用したトンネル切羽の自動評価システムを開発している。このシステムでは、トンネル支保の設定根拠となる弾性波速度を、切羽の通常の写真画像から80%以上の認識率で自動特定することに成功していた。
今回開発したシステムは、マルチスペクトル画像を利用することで、AIによる認識率のさらなる向上を目指したもの。マルチスペクトル画像は通常の写真画像と異なり、目視で認識できる可視光線の波長帯の電磁波だけでなく、紫外線や赤外線、遠赤外線など人の目には見えない不可視光線の波長帯の電磁波も記録できるという特徴がある。つまり、AIが認識率を高めるための判断材料が、通常写真よりも多く記録されている。
開発したシステムでは、火山岩と深成岩から各3種類、合計6種類の岩石供試体でスペクトル強度特性の形状を取得し、その形状と岩石種との関係を教師データとしてAIに学習させた。このAIが、専用カメラで撮影したトンネル切羽や掘削のり面のマルチスペクトル画像を解析し、岩石種や風化程度などを自動的に判定するという仕組みだ。試験では90%以上の正答率で岩石種を自動判定することに成功したという。
安藤ハザマでは、今後さらに多くの種類の岩石供試体を使用し、岩種評価の自動化の検討を進める。同時に、風化や変質の程度など、岩盤の工学的特性に影響を及ぼす要素を定量的に評価する手法の確立も検討する。さらに、岩石供試体での検討結果を基に、面的に地質状況を自動判定する手法の開発や、現在は地質専門技術者のスキルに依存している、地質図作成の自動化も検討していく。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 竹中工務店がAIを育成、構造設計を70%効率化
竹中工務店は構造設計業務を効率化するAIシステムの開発に着手した。ベンチャー企業のHEROZと提携し、設計ノウハウを集約したデータから、実務に生かせるAIを育成していく。 - トンネル切羽の地質評価、人工知能で自動化
安藤ハザマはトンネル切羽における地質評価を、人工知能による画像認識で自動化するシステムを開発した。現時点で切羽写真から、切羽時の弾性波速度を8割以上の認識率で特定できるという。 - 見えない杭施工を3次元で可視化、品質向上や施工リスクの低減に
地中の目に見えない箇所で行われるため、施工状況を確認・評価できない地盤改良や杭工事。安藤ハザマはこうした施工を可視化できる「3Dパイルビューアー」を開発した。 - 大林組がトンネル工事にAI活用、専門家の知見を学習
大林組は山岳トンネル工事での切羽の評価に、AI技術の1つであるディープラーニング(深層学習)の活用を進めている。一部の項目については、9割近い精度で地質学の専門家と同等の評価が行えているという。