ビルメンテで“設備の目視巡回をゼロ”にする?高砂熱学工業×AIベンチャー「LiLz Gauge」:ビルメン業界のオープンイノベーション(1/3 ページ)
高砂熱学工業は自社のリソースをスタートアップ企業に提供して、短期間での事業化を目指すプログラムを進めている。第1弾として、琉球大学構内に拠点を置くAIベンチャー企業LiLzと共同で、ビルメンテナンスでメーター機器の目視巡回をゼロにするIoT専用カメラとAIを組み合わせたクラウドサービスを開発した。
高砂熱学工業は、オープンイノベーションの取り組みとして、スタートアップ企業のアイデアや技術を活用し、新たなビジネスやサービスを創出するアクセラレータプログラム「高砂熱学工業アクセラレータ “just move on!”」を2017年度から展開している。
ビル管理現場でのメーター自動読み取りサービス“LiLz Gauge”
同社は、開発資金の提供をはじめ、実証試験のフィールド、顧客紹介、強みである空調やビルメンテナンスに関する技術や知見を提供。スタートアップ企業は、そのリソースを活用し不足している成長機会を補い、短期間での事業化を目指す。
2017年度に募集した第1回プログラムでは、応募25件の中から、事業化プログラムとしてLiLzを採択。高砂熱学工業ならびに、グループ会社の高砂丸誠エンジニアリングサービスの3社で、ビルメンテナンスの効率化と品質向上に寄与するサービスとして、IoTカメラと機械学習でメーターの読み取りを自動化するクラウドサービス「LiLz Gauge(リルズゲージ)」を、2019年10月のサービス開始を目標に共同開発した。
大規模なビルや工場、病院施設には多くのメーター類(圧力計、温度計、電流計など)が取り付けられており、設備の異常を早期に発見するため、点検作業員が日々現場を巡回してメーターの指示値を目視で読み取って記録するなど、その点検には多大な労力を要している。ビルメンテナンスでは、点検対象となる計器は全国で100万個以上にも上り、設備の老朽化に伴い、検査員が現地に行って毎日数時間の目視による巡回点検をしているのが実情だ。
共同開発した「LiLz Gauge」は、専用IoTカメラで撮影したメーターの画像から自動的に指示値を読み取り、正確なデータを表示/記録することができるクラウドサービス。このサービスで、点検作業員の負担が大幅に軽減され、メーター読み取り作業が自動化されることで、多くのデータが取得でき、より精度の高い分析が可能となり、最適な設備保全を実現することにつながる。
課題解決策と目される検針業務を自動化する“スマートメーター”もあるが、大掛かりな設備投資が必要なため、導入のハードルは高い。また、24時間365日稼働の施設では、一時的に停止するサービスが採用できず、屋内や屋外に電源およびネットワークが存在しないことも少なくない。LiLz Gaugeは、こうしたネックとなる部分をクリアしている。
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