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無人で月面の有人拠点を構築する鹿島の“遠隔施工システム”が実現に向け前進(2/2 ページ)
JAXAが開発を進めている月面に拠点を建設する無人施工の技術が、実現に向けて大きく前進した。技術のベースには、鹿島が2018年12月にダム工事で本格導入した、建設機械を自律自動化する「A4CSEL(クワッドアクセル)」が採用されている。
建機を改造し遠隔操作と自動運転が可能に
実現に向け、7トン級のキャリアダンプとバックホウを自動化建機に改造。それぞれ、自らの車体位置・方位を計測する機器や自動走行の制御装置を搭載し、遠隔操作と自動運転を可能にした。
改造した建機により、繰り返しや定型的な作業、指定された地点間の移動、自動運転の走行、細かな調整が必要な作業は遠隔操作で行うといった各スキームを構築。神奈川県小田原市にある鹿島建設の「西湘実験フィールド」で実験を行い、月面で直接人が立ち入ることなく有人拠点を建設する技術的な可能性を見いだした。
さらに研究では、建機の自動化に加え、通信遅延に対応した操作支援機能を開発した。3〜8秒程度の大きなタイムラグがある場合でも、遠隔操作している建機の操作性や安定性を損なわず、作業計画に応じた遠隔操作を可能にするサポート機能だ。
また、通信遅延の影響で、作業中の地形変化などがリアルタイムに把握できなくても、現地で計測したデータから状況に適合した動作の自動判断や複数の建機による衝突を回避する協調動作といった機能も搭載させた。
今後、鹿島建設では、地上における革新的な建設作業を目指すとともに、宇宙での拠点建設の実現に向け、GNSS(衛星測位システム)が使えない月や火星での高精度な位置推定、正確な地形認識、不安定な通信環境下におけるシステムの安定性確保など、さらなる研究開発を進めていく。
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