新日鉄興和不動産が本格展開するオフィスビルブランド「BIZCORE」、なぜ中規模ビルがターゲットなのか?(3/3 ページ)
中小規模のオフィスビルでは、ここ最近、築20年以上を迎えるビルが80%以上と急増している。この市場にターゲットを絞り、大手デベロッパー各社は、中規模でありながらハイグレードの設備を備えたオフィスビルブランドの開発に注力している。その一つが新日鉄興和不動産の「BIZCORE(ビズコア)」シリーズだ。2019年3月29日には、初弾の神保町に続く2棟目、シリーズのシンボルとなる「BIZCORE赤坂見附」が竣工する。
シリーズのフラグシップ物件、「赤坂見附」駅に直結
奈良氏は、ハイグレード中規模オフィスビルのターゲットを「BCPやセキュリティを重視する周辺に本社を構える大企業の分室や子会社、ワンフロア意識の高い長年エリアに拠点を置いてきた地場企業、自由な使い方を求める新興企業のセカンドステージの3つがある。この要望に応えるべく、BIZCOREシリーズで、テナント企業が“誇れる”オフィスを提供していく。BIZCOR赤坂見附は、シリーズのこれからのモデル物件と位置付けている」と話す。
BIZCOR赤坂見附の仕様をみると、まず最大のウリが地下1階で、東京メトロ銀座線/丸ノ内線「赤坂見附」駅と直結していることだろう。エレベタホールから、改札まで徒歩で数十秒と、入居企業の従業員にとっては、他には無い通勤の利便性が提供される。
貸室は、無柱空間で天井高は2800mm(ミリ)。複数面をカーテンウォールとし、開放的な執務空間としている。一般的なオフィスビルにありがちなトイレや水回りが、エレベーターそばなどの共有部ではなく、専有部のワンフロア内に設置。照明は自動調光で、平均机上照明照度は750lx(ルクス)。
ビル外観は、「Cフレーム」と呼ぶアルファベットのCを横に倒したフレームデザインで、これを各階に設けることで、各入居企業の城(Castile)が積み上がる「積層感」をイメージしたファサードとなっている。内装も、エレベーターのエントランスなどで、Cフレームをデザインコードとした照明計画やテナント名称サイン計画を採用している。
他にも、このクラスのビルでは通常は、設備関係のスペースで難しい、屋上庭園を設置。設計、設備に工夫を凝らして空間をねん出し、社員同士のリフレッシュスペースとしての活用を想定している。
BCP対策では、貸室天井裏にブレースを導入し、建築基準法で必要とされる強度の1.25倍以上の耐力とした。各階の専有部分には、災害用備蓄品を置けるスペースを設けている他、万一の災害時には、非常用電源でテナント専用部に36時間の電力を供給する。
セキュリティは最大5段階の認証で、高度な情報を扱うIT企業にも対応。共有部にはITV(監視カメラ)を設置し、情報漏えいを防ぐ。
省エネでは、CASBEE認証取得を目指し、LED照明やLow-Eペアガラスを採用。専有部は個別空調や自動調光システムとし、快適環境と省エネを両立させている。
なお、BIZCORE赤坂見附は、神保町と異なり、管理人が常駐しないため、インターシティシリーズなど、新日鉄興和不動産の旗艦ビルと統合させた一体的なビル制御システムを運用していく。
リーシング状況について奈良氏は、「現在の成約状況は50%。移転元は、赤坂見附駅近隣からがメイン。入居予定テナントからは、視認性の高さや駅直結が高評価で、非常用発電機の設置や屋上庭園も選定のポイントだった」と語る。
BIZCOREシリーズの今後の展開では、2019年7月末に築地、同年冬に渋谷、2021年夏に神田須田町、同年冬に東神田での計画が具体的に進められている。
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