「HoloLens」と「GyroEyeHolo」でトンネル補修履歴を現場にMR表示、ひび割れや漏水の特定容易に作業時間が半減:MR(2/2 ページ)
三井住友建設は、導水路トンネルの調査・点検業務を対象に、MR(Mixed Reality:複合現実)で、現実空間に補修履歴や調査・点検記録を3D表示させる「MOLE-FMR(モール-Field Mixed Reality)」を開発した。
トンネルのライフサイクル管理の効率化が実現
MOLE-FMRの構成要素の一つ、トンネル補修工事データベース「ジェネシスLTR(GENESIS/Legacy Tunnel Rehabilitation records)」は、三井住友建設、室蘭工業大学/板倉賢一研究室、日本原子力研究開発機構の3者が開発したトンネル・ライフサイクル管理のためのデータベース・マネジメント・システム。
例えば、覆工背面空洞充填(じゅうてん)であれば、穿孔覆工厚、空洞幅、充填材料品質、充填量、充填圧を現場でタブレット端末に入力するだけで、自動的に補修工事の履歴データベースが作成される。工事日報作成、品質・出来形管理情報の帳票、各種施工データのグラフ化・図化などの機能が搭載され、工事管理業務の効率化や高度化に貢献する。
ジェネシス-LTRは、データ入力部とデータ処理部から成り、入力された各種データは、XML(Extensible Markup Language)言語をベースとしたローカルデータベース上に構築。既存のRDBMS(Relational Database Management System)などへの移行/統合を効率的に進められる。
データ処理部のインタフェースには、トンネル調査・点検時に作成されたひび割れ・変状展開図を採用。展開図上の位置をクリックすると、その近傍で実施した補修工種と施工管理項目が表示され、これに関連した任意のデータへアクセスする。データベース・マネジメントの知識を持たないユーザーでも、直感的にデータ処理が行える。
施工情報は、データベース上で設計情報や位置情報などと関連付けられているため、他社開発のCIMモデルにデータを移し、活用することも想定されている。
MOLE-FMRの開発には、一般的にトンネル補修の履歴は、工事報告などを除いて保存されていないことが背景としてあった。MOLE-FMRであれば、補修・点検の履歴を有効活用して、トンネルのライフサイクル管理の効率化につなげられる。
補修工事は、工期が短く、少人数編成の施工体制であることが少なくないため、書類作成などに費やされる事務負担が大きく、その効率化は課題とされている。ジェネシスLTRと組み合わせたMOLE-FMRの導入により、報告書を含めた書類作成の手間削減や照明設備の無い場所でも、正確なひび割れや漏水箇所の特定が実現し、点検作業の短縮化が見込める。
三井住友建設では今後、導水路だけでなく、道路トンネルなどの社会インフラの維持管理への適用も目指すとしている。
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