産廃の“戻りコン”を再生する環境コンクリ、「藤沢公民館建設」に6000m3適用され藤沢市内の廃棄量600tも削減!:コンクリート技術(2/2 ページ)
鹿島建設、三和石産、東海大学が共同で開発した環境配慮型コンクリート「エコクリートR3」が、神奈川県・藤沢市で建設が進む複合施設建設工事の建物躯体に6000m3適用された。産廃となるしかない施工で使用できない生コンを再利用するため、藤沢市内で発生する生コンの廃棄量を約600t削減することにつながるという。
「東京ミッドタウン日比谷」に1万5000m3を導入
エコクリートR3は、戻りコンから骨材を取り除いた後、脱水、粉砕して製造するスラッジ再生セメント「Cem R3(セムアールスリー)」をセメント全体の20%使用している。強度は一般的なコンクリートと同等で、施工後もひび割れが無い良好な状態を維持し、高い品質を確保する。
2016年に、第三者証明として日本建築総合試験所の技術性能証明(GBRC性能証明 第16-10号)を取得し、2017年には、三和石産藤沢工場で生コンJIS認証を取得。躯体コンクリートにリサイクル材を活用したことは、建築物の環境性能評価にも大きく寄与する。
エコクリートR3を適用した藤沢公民館・労働会館等複合施設建設工事は、神奈川県藤沢市本町で進めれており、建物の構造・規模は、RC造・地上5階建て、延べ床面積7948m2(平方メートル)。設計は鹿島建設と梓設計、施工は鹿島建設が担当し、工期は2016年6月〜2019年2月。
鹿島建設では、エコクリートR3以外にも、多様なニーズに応える環境配慮型コンクリートを「エコクリートシリーズ」としてラインアップ。「地上躯体用コンクリート(エコクリートBLS」は、Cem R3と高炉スラグをバランスよく配合して、CO2排出量を25%削減した製品。中性化しにくく、地上躯体にも使えるなど汎用性が高い。
「地下躯体用コンクリート(ECMコンクリート)」は、NEDOプロジェクトで1大学7企業で共同開発。低発熱の高炉セメントを利用し、大断面部材で発生する ひび割れを抑制し、製造時のCO2排出量を60〜70%削減する。事例では2018年開業した「東京ミッドタウン日比谷」で、1万5000m3が適用されている。
「CFT(Concrete Filled Steel Tube)柱充填用コンクリート(エコクリートKKC)」は、高炉セメントを改良し、製造時のCO2排出量を40%低減。鋼管の内部にコンクリートを充てんするCFT柱に適した高い流動性を有する。2020年に完成が見込まれる東京・文京区「順天堂大学」の新研究棟建設で、370m3が導入されている。
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