自律飛行ドローンと“3次元形状”を教師データとするAIで、トンネル発破の「良否判定」を自動化:ドローン×AI(2/2 ページ)
戸田建設とRistは、熟練トンネル技能者が行っていた次に行う発破のための“良否判定”をドローンとAIで自動化する「Blast Eye/AI(ブラスト・アイ)」を開発した。独自開発のAIモデルは、一般的な2次元画像を対象としたものでなく、形状の判定という3次元領域を対象としている。
3次元飛び石形状で学習させたAIモデル「Blast AI」
AI技術は、発破後の3次元飛び石形状と、良否判定結果の対のデータを教師データ(学習用データ)として、学習させたAIモデル「Blast AI」を独自開発。AIモデルの作成には、点群を扱うディープラーニングに適したアルゴリズム「PointNet」を利用している。
Blast AIの開発にあたっては、施工中のトンネルの発破データでは、十分な学習用データ数が得られないため、実験室内に模擬的なトンネルを造り、「良好な発破」「普通の発破」「不良な発破」の3カテゴリーの飛び石形状を模して、デジタルカメラでそれぞれの3次元飛び石形状データを取得。種々の模擬発破の飛び石形状をトンネル経験が豊富な熟練者に判定させ、学習用データ約150組を準備した。
学習用データとは別に、「良好な発破」「普通の発破」「不良な発破」のバリデーションデータ(正答率確認用データ)も各10組用意し、検証した結果、正答率は約85%で、AIモデルとして実用段階にあることを確認している。なお、良否判定に要する時間は、約10秒ほどだという。
戸田建設ではドローン技術Blast Eyeを無人化・効率化・安全性向上の観点から、切羽の2次元画像や3次元形状データを無人で取得するための有効なツールになり得ると位置付けている。
Blast AIについては、2次元画像によるAIが一般的な中で、3次元の領域(形状の良否判定)に拡大したところに新規性があり、このAI開発過程で獲得した多くのノウハウを他の施工分野や用途に幅広く活用していくとしている。
また、今回のAIモデルは、実験室内での模擬発破データを使用したもののため、全国の発破掘削のデータを集積し、さらなる深層学習を重ねていくことで、判定精度を高めて実施工で使用することが実現すると方向性を示している。
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