施工BIM活用の所作と摺り合わせ(施工BIMのスタイル):「施工BIM活用の流儀」施工BIMスタートアップとステップアップの道筋(4)(2/2 ページ)
今回の連載は、施工BIMを導入するに当たって、初心者、入門者の視点で、日建連BIM専門部会発行の各冊子を分かり易く解説する事を念頭においた。また、広く世間に公開されている施工BIMに関する情報を鵜呑みにせず、施工BIMの実態を正しく冷静に見る視点や、施工BIMの今後の方向性や有るべき姿なども交えて解説する。これらの連載内容を今回「施工BIM活用の流儀」と名付けた。
プロジェクトの所作に変革をもたらす「BIMモデル合意」
「BIM モデル合意」においては、施工図・製作図作成の前にBIM モデルの作成に着手する。BIM モデルの作成期間は増加するが、合意された内容を反映するので、施工図・製作図作成の“手戻り”が無く図面作成期間を短縮できる。
この作業フロー(ワークフロー)は、これまでのプロジェクトの業務形態(プロジェクトの所作)を変えていくことになるだろう。
さらに、ゼネコンの設計・施工一括方式で、鉄骨製作図の作成時期の前倒しを図るため、従来、鉄骨ファブが作成していた鉄骨BIMモデルをゼネコンが作成し、鉄骨とスリーブなどの設備との取り合いの調整期間を短縮し、かつ鉄骨ファブの業者選定を待たずに、鉄骨製作図の作成に着手するような試みが始まっている。これは、責任・コスト・リスクが鉄骨ファブから、ゼネコン側に移行するという新しい建築生産プロセスだ。今後、他の工種にも広まって行く可能性がある。
「BIMモデル合意」の次のステップは、「BIMモデル合意」後に、2次元図面を承認するのでは無く、BIMモデルそのものを承認する事だ。BIMモデルのデジタル承認方法、承認後に改編が無い事の証明、データ保管方法など、技術的課題や運用方法の確立など、まだまだハードル高い。
しかし、製造業(自動車業界、航空機製造業界、造船業界など)では、既に「モデル承認」が行われ、製造現場では紙の2次元図面を持ち歩かず、タブレット端末やウェアラブル端末でモデルを確認しながら業務を行っている。
10年以上前に見学した自動車会社では、モデルのチェック項目が既に2000項目以上整備されており、そのチェックがOKならばモデルを承認するというフローが確立していた。チェック項目のデータベースは毎年追加され、自動チェックも進んでいた。単品大量生産の製造業と一品生産の建設業を単純に比較はできないが、建設業が進むべき道筋を示しているのではないだろうか。
以上、施工段階のプロジェクトの「所作」(業務フロー)がBIMモデルを活用した「摺り合わせ」に寄って変わって行き、施工BIMの活用が進んで行く事を「施工BIM活用の所作と摺り合わせ」と題して解説した。
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