「繊維」がアンカーの役割を担いモルタルとコンクリをつなぐ、タイルはく落防止工法:外壁はく落事故防止(1/2 ページ)
全国で相次ぐ外壁タイルの落下事故を防ぐため、淺沼組ら建設会社9社は新工法を開発し、せん断接着試験などの性能評価試験で一定の成果を得た。新工法は、コンクリート表面に繊維を植え込むことで、繊維がアンカーの役割を果たして、はく離が生じてもタイル張り付けモルタルとコンクリート躯体をつなげる仕組み。既に4件の建築工事の壁面に試験適用されているという。
淺沼組、鴻池組、佐藤工業、西武建設、大末建設、東亜建設工業、東急建設、東洋建設、松村組の9社は2018年11月6日、建物壁面のタイルはく落を防止する新工法「繊維植込みシートを用いたタイル張付けモルタルのはく落防止工法(略称:繊維植込み工法)」で、建築技術性能証明を取得したと公表した。取得日は2018年8月21日付(性能証明番号:GBRC 性能証明 第18-07号)。
繊維植込みシートを型枠のコンクリート充填面に張り付け
繊維植込み工法は、ポリプロピレン長繊維をポリエチレンの基布にニードルパンチで植え込んだ「繊維植込みシート」(図1)を型枠のコンクリート充填(じゅうてん)面に張り付ける(図2)。コンクリートを打ち込むことでコンクリート表面に繊維を植え込み(図3、4)、繊維のアンカー効果でタイル張付けモルタルのはく落を防止する。新工法により、コンクリート躯体表面に植え込まれた繊維が、タイル張付けモルタル層または不陸調整材の層と絡み合うことで、境界面に剥離が生じても、タイルや張付け材料の自重に対して、容易にはく落しない状態を構築できる。
建物外壁面でタイルなどの仕上げ層がはく落することは、人的・物的な被害をもたらすため、建物管理者をはじめ、設計者や施工者にとっても、対策に頭を悩ませている。
鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造の外壁仕上げでは、コンクリート躯体表面に下地モルタルをはじめとするモルタル層を施して、タイル張りなどの仕上げを行う場合が多い。仕上げ層の経年劣化や地震などによる剥離・はく落のほとんどは、コンクリート躯体表面とモルタル層の境界面で生じるため、はく落防止にはこの境界面で対策することが必要とされる。
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