日本郵政の本社移転で試された、BIMによるオフィスビルのファシリティマネジメント:BIMの可能性「BIM×FM」(3/3 ページ)
日本郵政グループ本社は2018年9月、霞が関から、大正時代から遁信省があったゆかりのある大手町へと、50年ぶりに本社機能を移転した。グループ社員6000人が一度に移転する一大プロジェクトで、最近のBIM(Building Information Modeling)のトレンドとなっているBIMモデルを活用したFM(ファシリティマネジメント)も試みられた。
建築ピボットの「i-ARM」で非常時の避難誘導計画を策定
BIMモデルと情報モデルの統合で、「建物取り扱い説明書」や「避難計画説明書」といった施設の運用マニュアルを図解で資料作成することも実現。
火災などの災害時の避難計画は、BIMモデルをベースに、建築ピボットの建築設計プラットフォーム「i-ARM(アイアーム)」に連携した専用ソフト「避難検証法連携」で、法令に基づく煙流動性状や避難行動の予測による避難安全の検証(ルートB)を行った。
オフィスのレイアウト変更や間仕切り変更は、頻繁にかわるため、安全な避難ルートの検討は難しいとされていた。BIMモデルを用いることで、3Dアニメーションにより、総務の素人でも避難路などを検討することが可能になった。
今後の展開として、斎藤氏は「BIMモデルと台帳を連携させ、延べ6万m2あるオフィス内の全ての鍵を管理することも試みている。BIMモデル上のキーボックスに、個人キー、サブキー、マスターキーの管理データを関連させ、鍵の持ち出し把握を行っている。現在は、ビル空調もWeb上で状況確認でき、トイレの混雑具合もポータルサイトから閲覧できるシステムを運用している」。
将来的にはFMモデルにより、「これからの修繕・維持コストを予測できるようにしていきたい。そうすればコストが空いた分、人材をクリエイティブな方面へ利用することもできるようになる。ITを有効活用することで、人手不足や少子高齢化などといった国内の閉塞感を解決して、いかに生産性につなげていくかが重要となるだろう」と提言した。
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