日本郵政の本社移転で試された、BIMによるオフィスビルのファシリティマネジメント:BIMの可能性「BIM×FM」(2/3 ページ)
日本郵政グループ本社は2018年9月、霞が関から、大正時代から遁信省があったゆかりのある大手町へと、50年ぶりに本社機能を移転した。グループ社員6000人が一度に移転する一大プロジェクトで、最近のBIM(Building Information Modeling)のトレンドとなっているBIMモデルを活用したFM(ファシリティマネジメント)も試みられた。
ArchiCADで作成したBIMモデルに什器・社員のデータを反映
オフィスビル自体の設備でも、ガスコージェネレーションシステムと地上階に非常用発電機を備え、首都直下地震でも構造にダメージを与えない制震構造を採用。さらに災害時の帰宅困難者3000人の受け入れ可能な災害対応と、大手町地区の地域冷暖房配管をループ化し、災害時に片側配管からの熱供給が停止した場合でも冷暖房がストップしない。
ビル外には、人道橋「竜閑さくら橋」を整備し、これまで接続の悪かった大手町から神田へのアクセスが楽になった。地下空間には「サンクンガーデン」を設け、今後は丸ノ内線大手町駅の改札口と直結する連絡地下通路を整備する予定。ビルの環境性能評価の指標「LEED」では、日本郵政の専有部分でゴールドを取得することが決まっている。
一般オフィスについては、61.6×88.4m(メートル)の現時点でエリア最大のオフィスで、以前は幹部の席だった窓際を共用スペースに、中央にはマグネットエリアと会議室を配し、大胆な配置転換を行った。
新本社のワークプレースの配置には、グラフィソフト社の建築CADソフトウェア「ArchiCAD」で作成したBIMモデルを活用。移転時に調達予定の什器(じゅうき)備品1万点と、移動する社員6000人の膨大な管理データを反映させ、オフィスビルの運営管理を見える化した。
そのために、設計図・施工図からワークプレースの情報モデルとなるBIMモデルと部屋ごとの属性情報が連携した「FMモデル」を構築。設計・施工モデルは情報量が多すぎるため、維持管理の際に必要な部分だけを残したFM用のLOD(Level of Development)を下げたモデルを作成。
BIMモデルに含まれる家具・什器・備品情報、建築、設備情報を部屋・空間別に情報リストを分類して、CSV形式でFMシステム社の「FINE-WEBS」に出力した。FINE-WEBS上で閲覧できる部屋ごとの台帳リストには、家具・什器・備品の他、仕上げ、寸法、建具などの情報がひも付けされ、管理用の情報モデルが作成される。
情報モデルは管理運営以外にも、必要な情報をアウトプットすることで、会議室や倉庫、ロッカーなどの各共用部と部門別のルームなどの各専用部の面積分析表、フロア別の什器種類別の分類表など、施設の維持管理を可視化できるグラフ作成に役立てることができる。
さらにグラフィソフトの「BIMx」、ディックスの「VizitViewer」といったBIMビュワーを使って、事前に社員が3次元と属性情報で、オフィス内の什器配置イメージの確認や資産管理をすることにも活用された。
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