30年以上にわたり「ミラノ・デザイン・ウィーク」のデザイン潮流を調査してきた集大成を披露、凸版印刷(2/3 ページ)
凸版印刷は、長年にわたって現地調査を続けてきた国際的なデザインの祭典「ミラノ・デザイン・ウィーク」のデザイントレンドを解説するプレミアムセミナーを開催した。講師には、昨年まで凸版印刷顧問を務めた梅崎健氏(現・武蔵野美術大学客員講師)を招き、ミラノサローネのCMFP(カラー、マテリアル、フィニッシュ、パターン)の潮流を今となっては貴重になった多数の写真でひもとき、今後のトレンド予測についても解説した。
2015年からは素材やカラーを組み合わせる「ミックス」の時代に移行
ミニマルデザインは、ドイツの建築家ミース・ファン・デル・ローエが提唱した「Less is more(少ないほうが豊か)」という建築思想に根付くもので、装飾的な要素は最小限に、機能性や素材そのものの風合い・質感を大切にする。
これまでの過度な装飾デコラティブの反動で、ここを境にシンプルなスタイルに一変し、フォルムも曲線から直線に移り変わった。また、今までの様に家具を含めた内装材単品での提案ではなく、空間全体をコーディネートする動きもここから始まった。
ミニマルデザインが波及した背景には、ビジネス形態の変革に伴うグローバル化で、ドイツ・ケルンを中心とした家具工業化の波が世界的に広がったことがある。その一方で、イタリアに3000以上あるとされる手作業で家具などを作っていた工房は苦境に陥ったという。
しかし、梅崎氏の見立てでは、「2005年には、ソフトバロックとしてデコラティブスタイルが復活。その後、3年の周期でシンプル/デコラティブが交互にトレンドになっている」と指摘。
近年では、2015年からは、クラッシックとモダンの融合など、カラーやマテリアルでも違うものを組み合わせる“ミックス”の時代に突入。その後、2016年は大柄石や幾何学パターンによる普遍的なタイムレス・スタイル、2017年は女性クリエイターの活躍が目立ち、植物をふんだんに使った自然を感じる特徴的な展示が増加した。
2018年は、多様性と実用性(ユーザビリティ)をキーワードに、素材の持つ力をそのまま表現する傾向がトレンド。単色+木目のツートンやカントリーテイストなど多様なフォルムやマテリアルの組み合わせの展示物が多かった。
梅崎氏はトレンドの変遷について、「昔に比べ、情報の質と量がスピードアップされ、輸出拡大によるグローバルトレンドの影響もあり、素材・技術の進歩で表現できるデザインが拡大した。これに伴いトレンドサイクルは短期化し、大幅な変化は3年、同イメージへの回帰には6年の循環が生まれた。ただし、シンプル/デコラティブと言っても、キーワードはポストモダン、ソフトバロック、ソフト・デコ、バリアビリティなどと毎年異なり、その違いがスタイルやカラー、木目、マテリアルに表れている」と指摘。
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