東電×ゼンリン×楽天が構想する鉄塔の“ドローンハイウェイ”を使った「個配サービス」(2/2 ページ)
東京電力ベンチャーズとゼンリンはドローンの飛行ルート整備「ドローンハイウェイ構想」を掲げ、2017年から既存の電力設備インフラと3次元地図を組み合わせた取り組みを進めている。今回、ここにドローンを使った個人住宅への配送サービスを目指す楽天が加わり、2020年のドローン物流実現に向け、3社共同で実証実験を行った。
「レベル3」山間部での目視外自律飛行による配送を実証
2018年6月27日の実験では、地元住民の利用を想定して、民家で楽天の商品注文アプリをスマートフォン上で操作し、約3km離れた場所にある浦山山荘の幕の内弁当を注文。浦山山荘では、スタッフが弁当をドローンに搭載させ、タブレット端末で離陸ボタンをタップ。ドローンは自動でドローンハイウェイに向かって上昇し、約3kmを飛行した。目的地に近づくとハイウェイを外れ、車でいえば一般道にあたるラストワンマイルを通って着陸。宅配物を自動でリリースし、再び上昇して、ハイウェイを経由して帰還した。
今回の結果により、政府の「空の産業革命に向けたロードマップ」で示された飛行レベル「レベル3(山間部での目視外自律飛行による荷物配送)」が実証されたことになる。東電とゼンリンは、2018年度内に関東の山間部などの無人地帯で、複数の「テストコース」を提供する。
また次の展開として、新たなパートナー企業と、気象情報を加味したルート生成やセンサーなどによる機体の制御、管制システムの情報統合などを実装させていく。
スケジュールでは、2019年度に有人地帯での技術・安全性の実証、ドローンポートにおける充電技術の開発、最終年度の2020年度には「レベル4(有人地帯での目視外飛行)」を掲げ、ドローンハイウェイを“安全・安心な空の道”と位置付け、供用を開始する見通しだ。
東京電力ベンチャーズ代表取締役社長・赤塚新司氏は、「現状では、ペイロード(積載量)や通信網、飛行エリアの規制など課題はまだまだ多い。現段階では、通信には920MHzを使用し、往復で10kmが飛べるが、現実的には通信状態やGPS環境に左右されてしまう。定期的かつ継続的な知見を蓄積し、2020年の事業化を目標にして、革新的な空の物流網を構築していく」と語った。
ゼンリン執行役員事業統括本部IoT事業本部長・竹川道郎氏は、ハイウェイを外れた後の個人宅までへの配送(ラストワンマイル)について、「全国を網羅しているゼンリンの地図を使って、将来は個人配送まで対応できるようにしていきたい。この部分は、既存の技術を含めて、さまざまな方法を検討しつつ、乗り越えなくてはいけない」とした。
今回、ドローンハイウェイ構想に参画した楽天では、国産ドローンに加えて、配送サービスに必要な専用アプリ開発し、ドローン配送サービス「楽天ドローン」を一般に提供することを目的に、独自の実証実験を重ねている。これまでには、2016年に千葉県のゴルフ場でのドローンサービスをはじめ、LTEを活用したドローン配送、福島県南相馬市でコンビニとの共同配送サービス、2018年3月26日には静岡県藤枝市で個人住宅で注文した商品をドローンで配達する実証実験も行った。
楽天常務執行役員・安藤公二氏は、「ワンデリバリー構想の一環として、一般消費者へのドローン配送サービスを国内で初めて提供することを目指している。そのためにも、ドローンハイウェイの安全飛行インフラと楽天ドローンシステムの本格的な連携を引き続き行っていく。今回は人のいない場所での実験だったが、実用化の段階では都市部での展開も見据えている」と語った。
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