ベンツで導入された実践的なAR溶接訓練システム:3D&バーチャルリアリティ展(1/2 ページ)
旭エレクトロニクスは、溶接機材とARを使った溶接訓練システムの本格的な販売を開始する。近々、職業訓練校での導入が予定されており、このシステムを使えばゲーム感覚でその道30年の技術が習得できるという。
旭興産グループの旭エレクトロニクスは、実物の溶接機材を使ったAR(拡張現実)シミュレーションによる溶接訓練システムを販売している。2018年6月20〜22日に東京ビッグサイトで開催された「第26回3D&バーチャルリアリティ展」で披露された。
スペインで開発されたAR溶接の訓練システム
旭エレクトロニクスが展開するAR溶接訓練は、スペインのIT企業SOLDAMATICが開発したARデバイス一体型の溶接用eラーニングシステム。スペインでは近年、若年層の雇用状況が悪化しており、世界的にみても不足している溶接工が特に人手不足に陥っている。
こうした状況を受け、SOLDAMATICは、若者や学生が興味をひきやすいARという形で、ゲーム感覚でできる溶接技能の習得システムを構築。海外ではこれまでに2000台以上が導入されており、ドイツではメルセデスベンツの溶接トレーニングにも採用されている。
AR溶接訓練は、溶接マスクを模したヘッドマウントディスプレイ(HMD)と溶接箇所をAR化するマーカーの付いた各種練習用ワークピース、溶接トーチ(TIG/MIG/MAGなど)、PCプラットフォーム、ソフトウェアで構成されている。実物に近い溶接用の道具を使うので、リアリティーのある実践的なトレーニングが行えるのが特長だ。
溶接は、鈑金の業界でも、専門職以外は誰もが毎日溶接するわけでなく、たまにしか行わないことも多い。そのため、練習しなければ資格試験に落ちてしまうこともある。
AR溶接訓練はトレーニング後にスコアが表示されるため、さまざまなレベルの溶接技術訓練生に正しい知識、能力、技量、感覚、スキルを習得してもらうことができる。
ソフトウェアには、上級者とされる職歴30年近い職人の作業手順や動きがデータ化されているため、訓練者は何度も何度も高得点を目指し、繰り返してトレーニングすることで自然に技術が身に着く。溶接で使うさまざまな金属のベース素材、ポジション、厚さを設定することが可能で、自動車にVRマーカーを付ければ、実物の車を対象にトレーニングすることもできる。
旭エレクトロニクスは、システムの日本語化と日本での独占販売を行う。既に自動車メーカーに導入されており、近々職業訓練校でも導入される予定だという。
同社フィールドセールス事業本部の担当者は、「実際の溶接訓練設備と比較すると、1年ほどで採算は取れる。訓練校の授業であれば、危険性が無いため、初心者1人でいつでも場所をとらずに練習する事ができる。指導者にとっても、毎回カリキュラムを作る必要がなくなり、上達するまで同じ内容で繰り返しできるため、負担軽減につながる」とメリットを語った。
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