積水ハウスが開発した「会話する施工ロボット」と「アシストスーツ」の実機デモ(3/3 ページ)
積水ハウスは、住宅施工現場での作業負荷軽減を目的に、「天井石こうボード施工ロボット」をテムザックと、「上向き作業用アシストスーツ」をダイドーと、それぞれ共同開発した。ロボットは、ゼネコンなどで導入されている産業用ロボットと異なり、AIを搭載し、互いに通信でコミュニケーションを取りながら施工する珍しいタイプ。アシストスーツは、作業者の腕をサポートし、長時間の辛い上向き作業を楽にする。
フィット感や可動域、防水仕様を改良
これまでの試験導入では、躯体施工、軒裏取り付け、天井石こうボード施工、設備工事などで作業負荷軽減と有効性が既に確認されている。今後は、2018年12月から順次、施工現場への本格導入を目指して、装着性の改良や装具の改善などを進めていく。その後は、ロードマップによると、中長期計画で、機構の改良や仕様・アクセサリーの追加など、バージョンアップを行っていくとしている。
アシストスーツの改良に携わったダイドーの追田尚幸社長は、「ここ数年、外装施工でも職人の作業負担は高まっており、課題解決のため、模索した結果、米国Ekso Bionics社の作業用スーツにたどり着き、ライセンス契約を締結するに至った。日本の建設現場に適した仕様とするため、45年近く外装部材で取引のある積水ハウスの住宅施工現場に試験的に導入し、改良を重ねてきた。現在、日本人の体形に合うフィット感や可動域、屋外での防水性などをテスト中で、2018年12月までに実用化させたい。将来的には、天井石こうボード施工だけでなく、外装工事や配管などの設備工事、トンネル点検など、幅広い上向き作業の現場で使ってもらえれば」と説明した。
人とロボット共生の時代へ、職業寿命の延命や新たな雇用創出に
天井石こうボード施工ロボットと、上向き作業用アシストスーツの開発経緯については、積水ハウスの施工部長・住友義則氏と、施工部課長・兼安健太郎氏が解説した。
建設業界では、1997年には685万人いた建設業就業者は、2016年に492万人まで大幅に減少しており、今後もこの傾向は続くとみられている。約3割を55歳以上が占め、29歳以下はわずか1割と高齢化が進む一方で若年層の入職は少なく、施工力の確保が喫緊の課題となっている。
積水ハウスでは、東日本校(茨城県古河市)、中日本校(滋賀県栗東市)、西日本校(山口県山口市)の3つの訓練校を設置し、1982年の開校以来、これまでに2638人の修了者を輩出している。業界への定着率も、一般的には75.5%(高卒者)のところ、92%と高く、若年層の施工力確保・育成に成功している。
しかし、施工現場での作業環境の改善はまだ実現できていないため、とくに負担の大きい上向き作業を対象に、今回の施工ロボットとアシストスーツを開発したという。
住友氏は、「10年もしないうちに人とロボットの共生の時代になるだろう。アシストスーツは年内をめどに現場に導入する。施工ロボットは、2020年の完成を目標にしたい。ロボットが実用化になれば、最大7割の作業軽減が図れる。あとの残り3割は、ロボットとアシストスーツを着た人との協働、もしくはロボットだけの単独領域なども検討に入れ、職業寿命の延命を図り、新たな雇用創出につなげていきたい」と今後の方向性を語った。
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