日立製作所のドローン点検サービス、2018年度は運用段階に:第1回ドローン×インフラメンテナンス連続セミナー(2)(2/2 ページ)
インフラメンテナンス国民会議は2018年5月10日、第1回ドローン関連政策・技術開発動向の連続セミナーを都内で開催した。この中から民間や研究機関におけるドローン×インフラメンテナンスの取り組みや提言を取り上げる。
人の目による目視点検のサポートと考えるべき
建設コンサルタントの大日本コンサルタントは、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の支援を受け4年前に、橋の周囲を飛行しながら点検画像を撮影する「空飛ぶデジカメ」としてドローンを開発した。
同社のドローンは、無線操縦型のクワッドコプタで、5分間の飛行ができる。ホバリングは6軸ジャイロで、カメラと超音波センサーを搭載。画像撮影支援として、被写体との離隔は超音波センサー、上昇・加工は気圧センサー、カメラスタビライザは3軸ジャイロとレーザー距離計を備える。さらに、2本のロープを用いた係留装置を備え、第三者の安全性を確保した。
現場での検証を終えた感想として、保全エンジニアリング研究室の小林大氏は、「ひび割れ幅0.05mmレベルから検出できたが、これ以上の精度を求めると、コストが高額になり、現実的ではない。点検には統一的な尺度による健全な診断が求められるため、画像ごとに解像度が違うのでは実際の運用は厳しい。近接目視には、重篤な損傷を発見した場合、迅速な安全確保ができるメリットもある」とドローン単独の点検にはハードルがあるとした。
ドローン導入の効果では、「人の目による点検では4分の3の時間を点検作業が占めたが、ドローンはわずか4分の1という作業時間の大幅な短縮をもたらした。実際には近接目視の代替で業務を行うのは厳しい。人間の完璧な代わりではなく、点検作業をサポートする形を目指すべき。人力による画像認識の時間的コストを縮めてくれる画像解析やAIは今後、必要とされるだろう」と語った。
赤外線×ドローンの可能性
赤外線カメラによる非破壊検査の方法を調査・研究している一般社団法人赤外線構造物診断研究会は、赤外線サーモグラフィとドローンの可能性と課題をプレゼンした。
赤外線調査は、物体から放出される赤外線エネルギーを温度値に変換することができる赤外線カメラを用いて行われる非破壊検査。ビルなどの外壁調査では、タイルの浮きによる空へき部分が熱伝導の違いにより、表面温度の違いとして表出することを利用して調べる。
壁面以外にも、赤外線サーモグラフィを導入すれば、吹き付け法面(のりめん)の背面空洞や外壁の漏水が調査できる。
事務局の菊地孝氏は「赤外線搭載のドローンによる建築・土木の点検は、これまで視認できなかった場所での撮影をはじめ、業務が効率化されることでより多面的に詳細点検ができるなどの利点がある。とくに動かしながら外壁などの状況を調べられるのは重要で、上空からの温度分布の見える化で、昼夜連続撮影ができる赤外線の強みと組み合わせれば、これまでの赤外線調査とは異なる分野での活用にも期待が持てる」と語った。
今後の課題では、「飛行区域の周辺住民の許可はもちろん、都心部などで飛ばす場合には電柱やビル、最も重要な電波障害への対応といった安全性確保のルール作りが求められる」とした。
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